テロ報道のジレンマ
国際会議で問題提起
ユネスコ主催の「世界報道自由デー」記念国際会議が内外の報道関係者を招きマニラで開催中だ。今年のテーマは「テロと報道」。米中枢同時テロの余波の中で、会議ではテロ報道のジレンマが提起された。知る権利と国の安全保障という相克にさらされているからだ。
参加者は、安全保障を理由とする検閲や取材制限、締め付けを米国主導の「国境なき戦争」の特徴とした。会議では「報道の自由がこの戦争による最初の犠牲者だ」との声が上がっている。
報道にとって悲劇的なのは、だれも記者の身の安全を保証してくれないということだ。戦闘員の取り扱いを定めた国際条約のような、記者を保護する国際規約もない。記者は「格好の獲物」だ。今後もさらに多くの犠牲者が出ることが予想される。
ジレンマが今回の会議で解決されることはあり得ない。しかし、参加者はイスラム過激派、アブサヤフの誘拐事件や米国によるアフガニスタン攻撃の報道事例を参考に、自ら報道ガイドラインを作成する際の貴重な教訓を得ることができる。
例えば、アブサヤフ報道では「公式の前線」などはないということを記者らは身をもって体験した。多くの記者が取材に赴き人質となった。アブサヤフは記者の身分証明書に敬意を払わず、一方で自分たちの宣伝にメディアを利用した。
また、アフガニスタンでは、取材は同国を実効支配していたタリバンなどを攻撃する北部同盟や米軍の背後で行われ、偏った情報が報道された。ブッシュ米大統領は「対テロ戦争を支持しないものは敵」と発言した。翼賛的な情報提供と愛国心を同一視するこの種の圧力に、一部報道関係者からは冷笑が浴びせられた。(2日・インクワイアラー)