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5月5日のまにら新聞から

マニラの「ペット市場」

[ 1131字|2002.5.5|社会 (society)|名所探訪 ]

警察おびえる違法業者

 マニラ市キアポのレクト通り沿いにある「アランケ市場」。広さは五百平方メートルほどの四角形の敷地で、一見したところ何の変哲もない公営市場だ。だが、生鮮野菜売場などを通り抜け、市場北側に近づくと、ものすごい悪臭が漂ってきた。ここは犬や鳥の入った無数のかごが並ぶ首都圏最大の「ペット市場」なのだ。

 長屋風の建物の一角でペットショップを三十年近く営むバルバラ・バウティスタさん(40)は「戦後まもなくに市場が開設されたと聞いている。ここにショップが何軒あるのかって?多くて数えたこともないよ」と語る。客の大半がフィリピン人だが「日本人や台湾人もよく来る」という。

 客の大半が子犬やインコをペットとして買い求める。だが、地方の農家から繁殖目的でウサギやアヒルを買い求める人もいる。

 バウティスタさんの店はタイル敷きで約三十平方メートルほど。さび付いたかごが三、四段に積まれている。一日の売上は多いときで二千ペソ程度。最も売れているのが手のりインコで、つがいで三百五十ペソ。同三百ペソの子ウサギも人気だ。水槽には竜のような熱帯魚「アロワナ」もいる。こちらは一匹八千五百ペソ。マレーシアのディーラーから取り寄せたという。

 市場を見回すと、生き物をぎゅうぎゅうに詰め込んでいるかごもある。日本の満員電車のようだ。

 心配になり「あんなに詰め込んで大丈夫なのか」と尋ねてみると、「衛生状態には気を付けているから大丈夫」と異口同音の答えが返ってきた。実際、糞などの掃除は一日何度も行い、インコにはビタミン剤も与えているという。

 ふと隣の店に目をやると、体長約三十センチメートルほどのイグアナを従業員が手づかみにしている。品定めしている客は欧米人らしき初老の男性だ。「一匹五千ペソ」と言う声が聞こえてきた。

 従業員に近づいて話しかけようとした。すると、段ボール箱の中にイグアナをあわてて隠してしまった。

 バウティスタさんに聞いてみると、熱帯アメリカを中心に生息するトカゲ類、イグアナの販売は野生動物保護のため法律で禁止されているという。だが、近くの店ではパラワン州で取れたという体長三十センチほどの小猿や、長さ一メートル以上はあるニシキヘビを入れたかごが並んでいた。いずれも「警察に見つかったら押収される代物」である。

 先月末、違法販売に対する警察の一斉手入れがあり、多数の動物が押収された。店のオーナーの間では「押収後、金になる動物を警官は転売している」というのが「常識」だ。

 バウティスタさんは「いつも動物の体調に気を付けていなければならないので大変な仕事だよ。動物が好きじゃないとできない」と言った。その直後、「警官は嫌いだけどね」と付け加えた。(阿部隼人)

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