パラワン州のチョウ園
秘境に舞うチョウのすみか
自然が残され秘境と呼ばれるパラワン島の中央部にある州都、プエルトプリンセサ市。この町の周辺には観光資源が集中している。アイランドホッピングで有名なホンダ湾、プエルトプリンセサ地下河川国立公園、ワニの養殖・研究に当たるクロコダイル・ファーム・インスティトゥート、国内最大規模で塀のないイワヒッグ刑務所などが一日観光コースに組み込まれている。最近加わったのが同市サンタモニカにあるパラワン・バタフライ・ガーデンだ。
入場するとまず、別室で十分間ほどチョウの生態を説明したビデオを見せられる。その後、二百平方メートルほどのガーデンに案内されると、広々とした庭園にさまざまな南国の植物と、それに群がるチョウが目に飛び込んできた。ミカドアゲハに似た白と黒のコントラスト鮮やかなもの、カラスアゲハのように黒地に青いしっぽをつけたチョウがあちこちで飛んだり、羽を休めたりしている。アゲハチョウやモンシロチョウの仲間たちという。
チョウの宝庫であるパラワン島では、これまで約四百種が確認されている。日本人収集家による発見も多い。オーナーのロイ・ロドリゲスさん(37)は「九歳のころから父親に山に連れられチョウを追いかけていた。その後ガイドをしていた時に知り合った日本人の収集家がチョウの名前や生態を詳しく教えてくれた」と明かしてくれた。一九九〇年から二年間、マレーシアのペナン島にあるバタフライ・ファームで働き、チョウの育成のノウハウを身に付けたという。
一つの種のチョウは広大なジャングルにある一、二種類の植物にしか卵を産み付けず、産卵用の植物がなくなると死滅してしまう。このため、ロイさんはまず、森林伐採で絶滅の危機にあった植物の保護から始めた。自宅の庭を改造し、植物の苗を移植し、低地でも適応できる約三十種のさなぎを買い集めて九八年にこのガーデンを開設した。
訪れた子どもらは、展示でチョウのさなぎやサソリ、カブトムシなどを見て歓声を上げ、大人にいろいろ質問していた。「将来は、環境教育用ビデオなどの教材開発も進め、自然保護にさらに取り組みたい」とロイさんは抱負を語った。
しかし、ホンダ湾にある有名リゾートホテル、「ドスパルマス」で昨年五月、イスラム過激派、アブサヤフによる誘拐事件が発生。外国政府が渡航に関する危険度を引き上げたことで観光客が減少し、同ガーデンの経営も楽ではない。
実際、滞在した午前中の二時間で、出会ったのは二組の家族連れだけだった。同市の観光ガイド、ジネリン・ボーヌスさん(23)も「誘拐事件発生以降、市内のガイド数は半減した」と事態の深刻さを訴えた。
年中無休で、開園時間は午前八時半から午後四時半まで。入場料は大人二十五ペソ、学生十五ペソ。(澤田公伸)