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4月7日のまにら新聞から

ラグナ州カリラヤ湖

[ 1113字|2002.4.7|社会 (society)|名所探訪 ]

ブラックバス釣りで名声

 ブラックバスのルアー釣りは日本で大ブーム、今や百万人が楽しむ一大娯楽となった。強い引きと美しい魚体を誇るこの魚は、フィリピンでも人気が高い。

 バス釣り場として有名なのがラグナ州のカリラヤ湖だ。導水管でつながったルモット湖と合わせ、国内随一の釣り場となっている。

 ラグナ湖の東岸、急流ボート下りで有名なパグサンハンの街からトライシクルで三十分。標高差二百メートル余りを一気に登ると広大な湖が眼前に広がった。

 バス釣りガイドのルディ・ケマダさん(32)は、三人乗りモーターボートで釣り客をポイントに案内するのが仕事だ。料金は一日三千ペソ、一カ月に五︱七人の客がある。涼しくなる十一月、十二月が釣りには最適で、ライセンスは不要。「セリオ・オスメーニャ上院議員もよく来ますよ」と話す。

 マニラに本拠を置くスポーツフィッシング団体、フィリピン・ゲームフィッシング基金(PGFF)によると、フィリピン国内の記録は五・一四キロ。非公式記録では五・二キロの大物が今年一月にここで上がっている。遠く日本からカリラヤにバス釣りに訪れる日本人もある。各地で開かれているバス釣りトーナメントも十一月︱一月にはここで集中開催される。

 真夏を迎えたフィリピン。この時期カリラヤ湖は減水のため白く濁っているが、子どもたちは平気で水遊びに興じている。湖が完成したのは日本軍政下の一九四三年という。急な渓谷をせき止めた発電用の貯水池だ。貯水量は八千万立方メートル。水はカリラヤ水力発電所へと導水され、最後はラグナ湖に流れ込む。

 カリラヤ湖はフィリピン、日本、米国が袖を振り合う辻のような役割を果たしてきた。北米原産のブラックバスが湖に姿を現すようになったのは一九八〇年ごろ。持ち込んだのは駐比米軍兵士だ。暑さに強く大型化する亜種、フロリダバスが選ばれた。

 米兵だけではない。イメルダ・マルコス夫人もかつて、ベンゲット州バギオ市近郊の湖にバスを持ち込んだ。しかし地震の後、湖底から浸出した硫黄が原因で死滅した。この後、バス釣り場としてのカリラヤ湖の名声はより高まった。

 湖に臨む丘には一九七六年に日本政府の資金で建設された日本人戦没者慰霊公園がある。入り口の石碑にには、建設委員長として岸信介元首相の名が刻まれ、八月十五日の終戦記念日には、在フィリピン日本大使館が慰霊祭を催す。訪れた日は聖週間の最終日。広い公園にはピクニックを楽しむフィリピン人家族の姿が目立った。

 その日最後の便となる午後五時半のジプニーを待った夕暮れ時。湖南西のかたなには霊山バナハウが鮮明な山容を現した。雑貨屋から調子外れのタガログ語のカラオケが響いていた。(岡本篤)

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