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3月31日のまにら新聞から

マニラ市の道教寺院

[ 1082字|2002.3.31|社会 (society)|名所探訪 ]

極彩色のけんらんな世界

 マニラ市マラテのバスケス通り沿いに道教寺院の「国際道教寺院」がある。黄色い中国式の門の上では十二匹の緑の竜が身をくねらせ、ひときわ目を引く。近づくにつれ、線香の独特のにおいが鼻を突いてくる。門には「道教」と大きく書かれてあり、ここが仏教寺院ではないことを教えてくれる。

 寺院に入ると中は極彩色のけんらんな世界が目の前に広がった。三方のガラス張りの祭壇には百体を超える神々や聖人らの像が所狭しと並ぶ。まるで聖像の「サリサリストア(雑貨屋)」。仏像から中国の歴史・伝説上の偉人、長いひげを伸ばした仙人、今にも空に舞い上がりそうな仙女などが、金、赤などさまざまな色で彩られた華麗な衣服やよろいに身を包む。

 像は衣服だけでなく肌の部分にも色が付いている。日本の仏像を見慣れた目には、グロテスクで生々しく映る。中には三国志の関羽が神格化された関帝や観音菩薩(ぼさつ)など日本人になじみのある像も見受けられる。同寺院によると、道教は中国の民間信仰に仏教、神仙思想などが混合してできた。そのため神々の数は、「願いの数だけ神がいると言われるほど多い」。

 道教は信仰を通じて現世で利益を得ようとする側面が強いのも特徴。道教の僧にあたる道士は、方角や地勢を占う「風水術」や「護符」を駆使して災厄を取り除き、信者に幸福をもたらす。同寺院の住職、フェルミン・エウカリサ道士(67)も本場の台湾と中国で約十五年にわたり修行した経験を持つ「風水師」だ。

 当初は中華街に小さな事務所を構えた。その後、信者の増加とともに場所を移して規模を拡大、一九九〇年、ようやく寺院の建設が実現した。約四十年にわたり多くの人々に「利益を誘導」した結果、同道士の下には複数の大統領経験者や国会議員、国家警察や軍の高官から著名な企業家までが助言を求めにやって来るという。毎年、米国支部に出掛けるなど「海外出張」も頻繁で、世界各地で引っ張りだこのようだ。

 同道士に頼んで今年を占ってもらったところ、南西の方角が吉、北東が凶と出た。アジアの北東に位置する日本は運勢は最悪で、水不足や大火事に直面するほか、地震などの大災害に襲われる可能性が高いという。一方、フィリピンは比米合同軍事演習が行われているバシラン州が南西に当たる。イスラム過激派、アブサヤフのせん滅に成功しそうだという。

 同寺院の推定では、フィリピンの道教信者は百万人を優に超える。他の宗教の信者であっても棄教せずに道教の信者になれることや中国系フィリピン人の成功にあやかりたいという願望から一般のフィリピン人信者も増えているという。(湯浅理)

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