スービック・ジャングル・トレッキング
森林サバイバルを伝授
マニラから長距離バスで三時間、サンバレス州オロンガポ市に隣接するスービック海軍基地跡に到着する。現在はスービック湾域開発局管轄の経済特別区(エコゾーン)に変ぼうした。
敷地内にはゴルフコース、ホテルや免税店などと並びジャングル・トレッキング場が三つある。その一つのパムラックラキン・フォレスト・トレイルでは、アエタ族のガイドが、ジャングルサバイバル法を伝授してくれる。
ゴルフコースを通り抜け、山道に入ると事務所がある。その横を流れる小川に掛かる橋を渡ると、様々な木々や植物が茂るジャングルに入る。コースは半時間のミニ・ツアーから二時間ほどのエコ・ツアー、キャンプを含む一泊ツアーがある。ガイドは、木や野草の効用と利用法、虫や動物との接し方、竹を使った火の起こし方や炊飯法などを英語でデモンストレーションしてくれる。
ガイドのリーダー格、ドミナドール・リワナッグさん(52)はまず、パムラックラッキンというピンクの花を咲かせる背の高いつる科植物を紹介した。「これにハチが好んで蜂蜜を作る。茎も丈夫で弓矢の材料になる」と指さす。また、石けんとして使えるつる科の「ゴゴ」、実を食べると腹痛や歯痛が治る「マホガニー」、茎を切ると水が滴り落ちる「ウォーター・バンブー・バイン」。さらにジャングルの「バイアグラ」と呼ばれる精力増強作用のある「タガトイ」などをボロで切ったりしながら効用を示してゆく。
この地域は、かつて米軍が保護地区に指定していたため森林が保存されている。米軍撤収後も観光資源として森林伐採は禁止されてきた。ドミナドールさんの両親は日本占領期に抗日ゲリラのメンバーだったという。「ここはバタアン戦線の激戦地で多数の日本兵が死んだ。戦後しばらくはアエタも彼らの残した『ハンゴー』でご飯を炊いた」と話した後、竹だけを使った炊飯の実演を始めた。
まず乾いた竹を真っ二つに割り、ボロで竹に巧みな細工を施し擦り合わせると十秒ほどで火が起きた。日本の孟宗(もうそう)竹に似た青い竹の一節を切り取り、長方形の小穴を開けて米と水を流し込み、竹のふたを閉めて火に掛けた。約二十分ぐらいで四人分のごはんが炊きあがった。竹を鍋がわりに使ってシニガン・スープなどを料理しツアー参加者にふるまった。
事務所職員のロリーナ・スアソさん(33)は「ツアー料金の八割はアエタのガイドが手にする。でも観光客の減少から収入不足でゴルフコースのボール拾いや植林事業の作業員などへの転職者が多い」と話した。
参加費は大人一人、三十ペソから五百ペソ(宿泊ツアー)。詳しくはパムラックラッキン・フォレスト・トレイル事務所(〇四七・二五二・四一五一)まで。(澤田公伸)