グロリエッタの託児所
「安全」を売り物に
フィリピンの商業・金融センターで知られるマカティ市の中心部。買い物客でにぎわうアヤラセンターのグロリエッタモールにユニークな託児所「チルドレン・アクティビティ・センター」がある。
この託児所は、書籍販売大手「グッドウィル・ブックストア」グロリエッタ店が地下一階に設けている。「子供に気を取られず欲しい本をじっくり選んでもらいたい」と一九九四年から始めた。現在、バレエやテコンドーなど四つの「おけいこ教室」も子供向けに開いている。
預かる子供の数は平日三十︱五十人、週末になれば百三十︱百五十人に上る。主な利用者は政治家や実業家、外国人などの富裕層。買い物の途中に二、三時間預けたり、見知らぬ子供と接することで社交性を身につけてほしいと預ける親もいる。
「子供とずっと一緒に買い物すればお互い疲れる。ここに預けた方が私も子供も楽しめていいんじゃないかしら」と利用する母親は口をそろえる。しかし、「子供一人を預けるのは気掛かり」と自宅からベビーシッターを同伴させるケースが多い。
責任者のドナマリー・バルボアさん(35)は「『マカティ市のショッピングモールの中』という立地条件に加え、書店には警備員が常に約二十人おり警備態勢は万全だ。顧客の間で定着した『安全性』が口コミなどで広がり、利用客は年々増加している」と説明する。平日一時間八十ペソ、土、日曜日九十ペソは利用者には決して高い料金ではないだろう。
託児所のスタッフは看護士や児童心理学などを専攻した女性十人。午後には紙芝居やお遊戯などの時間もある。
子どもの遊び場は四つに別れている。ままごとやブロック遊びができる大部屋。児童書籍やコンピュータを置いた学習ルーム、マットと座布団が敷かれ昼寝ができるビデオルーム、食事もできる多目的ルームと至れり尽くせりだ。
大部屋にある高さ三メートルほどの滑り台やおもちゃの車に乗って無邪気に遊ぶ子供たちを横目に、ベビーシッターたちは「子供が興奮しているのでけがをしないか心配」と気疲れした様子だ。英語やフィリピノ語で書かれた約五千冊の絵本や児童本、コンピューター五台を置いた別の部屋をのぞくと女の子二人が英語で楽しそうにおしゃべりしている。
週に一度、「託児所の日」を決め三歳の娘を預けているマリサ・チョンコさん(31}=ケソン市在住=は「保育所以外の子どもと交わり社交性を養ってほしい。預けた時間に私も買い物を楽しめるので一石二鳥ですよ」と満足そうだった。
パンガシナン州ダグーパン市から六歳の長女を連れてショッピングにやって来た主婦{30}は「地方にもこんな託児所があればいいですね」と話していた。(栗田珠希)