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10月29日のまにら新聞から

希望絶たれた観光業

[ 685字|2001.10.29|社会 (society)|新聞論調 ]

パラワンのリゾート閉鎖

 パラワン州の高級リゾート「ドス・パルマス・ビーチリゾート」が閉鎖に追い込まれた。今年五月二十七日にイスラム過激派、アブサヤフに襲撃されて以降、客数が激減。経営陣が発表した声明文によると「従業員百三十人の生活を維持しようと努めてきたが、米国テロで完全に希望を絶たれた」という。

 連れ去れた人質の中に米国人三人が含まれ、うち一人が首をはねられたこと。そして、犯人グループが、米中枢同時テロの主要容疑者とされるウサマ・ビンラディン氏と関係のあるアブサヤフだったこと。これらの要素がより事態を悪化させた。

 同時テロ以降、フィリピンは「テロリストを抱える国」として米政府から名指しされている。さらに、日米両国は、フィリピンを旅行しないよう自国民に警告している。同リゾートの声明が指摘する通り、テロは観光業界関係者が抱いていた希望を摘み取ってしまった。

 フィリピン政府はアブサヤフによる誘拐事件が相次いだ昨年以来、観光産業の「復興」に力を尽くしてきた。観光省はあの手この手で外国人観光客の誘致を試みているが、アブサヤフのニュースがケーブルテレビで流れ続ける限り観光客の姿が戻ることはないだろう。

 観光省は「アブサヤフの活動地域はバシラン島などに限られている」と訴えている。ただし、バシラン島が観光地からどの程度離れているのかを知る観光客はほとんどいない。

 観光客の足を遠ざけるためには、「国を代表するパラワン島のリゾートが襲撃された」というニュースだけで十分だ。リゾート閉鎖は確かに残念で暗いニュースではあるが、政府はこれを契機に国の治安向上に真剣に取り組むべきだろう。

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