基地跡地ゴルフ練習場
少年少女が学費稼ぎ
クラブを構えた客の前に座り、器用に土を盛り上げてゴルフボールをのせる。マカティ市のボニファシオ陸軍基地内にあるゴルフ練習場では、ティーアップは苦学する少年少女の手作業だ。
ティーンエイジャーを中心に百十人の若者らが働き、四十五基ある打ちっ放し専用レーンで赤いTシャツを着て黙々とティーアップの仕事をこなしている。
「学費を稼ぐためにここでアルバイトしている。今は夏休みで毎日働けるからうれしい」。首都圏タギッグ町ウエスタン・ビクータン在住のジェシー・レカニャ君(18)はマカティ市立大学の三年生。
大学ではコンピューター技術学科を選んだ。「これからはコンピューターの知識がビジネスにつながる時代」と将来は優秀な技術者になって海外で仕事をするのが夢だ。
年間一千ペソの学費のほか、家計を支えるために四年前からティーアップの仕事を始めた。客はボール代込みで一時間百五十ペソを支払い、うち三十ペソが少年少女たちの取り分になる。
「あとはチップだけど、平均は一人五十ペソ。外国人は良いお客さんで、特に日本人や米国人は百—二百ペソくれる時もある。客がいない時は友達と談笑していればいいし、仕事はきつくない」とレカニャ君。
営業時間の午前七時から午後十時までいて、取れる客は三—四人。一日の平均収入は二百ペソで、一カ月で三、四千ペソ稼ぐという。
お客が目の前でスイングするが、レカニャ君は「初めは怖かったけど、慣れればお客さんのスイングを見る余裕も出てくる。日本人は本当に真剣。よっぽどゴルフ好きなんだね」と笑う。
このゴルフ練習場は国軍関係者の娯楽施設として一九九六年に開業したが、今では大半が外国人を中心に一般客が利用している。レッスンプロ二十八人が在籍し、一時間四百ペソで講習が受けられる。
マネージャーの退役軍人、ジュン・アクニャさん(51)は「ティーアップ設備を導入してもいいんだけど、彼らの収入源を奪うわけにはいかない。学費を稼ぎ家計を助けたりしているみんな真面目な少年少女だしね」と話していた。(野口弘宜)