ルイース・THX・シネマ
最高設備誇る映画館
映画はフィリピンで最も人気のある娯楽だ。ハリウッド映画は米国から真っ先に輸入されるし、国内でも年間百二十本を超える映画が製作されている。しかし、映画館の設備は概して貧しい。首都圏マカティ市アモルソロ通りに六年前に開館したルイース・THX・シネマは国内映画ファンを満足させる設備のある数少ない映画館の一つだ。
館内は広く奥行きがあり、客席数は四百八十一。スクリーン奥の三つを含め全部で七つの音声チャンネルがあり、側壁の音吸収設備と合わせると映画のリアルな音響効果が三百六十度の迫力で体験できる。座席はスペイン製でゆったり座れ、全てのシートの頭部接触部分には汚れ防止の特別シートが掛けられている。とても完成から六年たったとは思えないほど館内は清潔だ。
映画館の名前にある「THX」は、アメリカ・ハリウッドのルーカスフィルム社が定めた設備基準から採用され、世界最高レベルの映画館を意味する。
音響効果などの設備関係上、上映されるのは外国映画が主だが、時々国内映画も上映する。最近ではマリルー・アバヤ監督による「ホセ・リサール」や「ムロアミ」などが上映された。
同映画館は上映事業の収益金を基金にプールしている。その利息で、フィリピン大学と協力して映画雑誌「ペリクラ」(タガログ語で映画の意味)を季刊発行し、またLRP財団という非政府組織(NGO)を立ち上げ、ストリートチルドレン支援や病院への医療設備寄付を続けている。
同映画館の副支配人、レイムンド・ルフィーノさん(23)は、「私のおじが最高の映画館設立の夢を求めて奔走したが、開館直前に事故で死亡した。故人の遺志を継ごうと遺族はチャリティー事業に乗り出した」と説明した。
同館では毎月のように映画批評家を招きレクチャー付き映画上映会も行っている。「来館者の鑑賞眼を高め、ひいてはフィリピン映画全体の質を高めたい」と言う。
「ジョージ・ルーカス監督の『スターウォーズ』が大好き」と若き副支配人のレイムンドさんはいう。そして「海賊版ビデオの普及やアジア経済危機の影響で観客数が減って経営は苦しい。でも映画館経営は続けたい」と力強く語った。
同映画館は会員制で、三千ペソの永久会員費を支払えば、一回分のチケットが八十ペソで購入出来る。詳しくは(七五一・二〇一〇)まで。(澤田公伸)