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国際稲研究所博物館

2000/5/14 社会

一粒の重み 訴える

 ラグナ州のフィリピン大学ロスバニオス校の構内にある国際稲研究所(IRRI)博物館。館内を一周すると、毎日食べている米の一粒、一粒の重みを考えさせられる。

 同研究所設立四十周年を記念して四月三日に開館されたばかりだ。IRRIは、世界でただ一つの国際的な稲作の研究機関で、日本をはじめ二十五カ国の政府などの資金援助で運営されている。

 博物館に入って、まず目につくのは「人口時計」。見る間に数字が変わり、世界の人口が増え続けていることを示す。世界の人口は現在、十秒に約二十四人の割合で増加している。これに対して、世界に約八十五億ヘクタールある米の作付け面積は、七・六七秒ごとに一ヘクタールずつ減っているそうだ。

 「米の供給が将来、人口の増加に追いつかなくなるのでは」と、見る者を不安にさせる。

 続いて、さまざまな環境下で育つ米が写真展示で紹介されている。茎の高さが六・七メートルもある稲があるのに驚いた。底深い水田でも根を張れる品種で、米の適応力の高さに感心させられた。

 モミのサンプルの中に「IR︱8」と表示されたものがあった。見たところは他のモミと変わらないが、一九六六年にIRRIが改良した高収量品種。六〇年代、飢餓に直面していたアジアなどの食糧危機を解決するために作り出され、「緑の革命」とさえ呼ばれた。しかし、化学肥料の多用で、土地をやせさせるという問題が指摘された。

 化学肥料とともに、環境問題になっているのが農薬だ。展示の中には、「害虫の卵を食べているアリ」などの説明付きの写真もあった。農薬に代わって害虫を退治する益虫も紹介されている。

 IRRIの「国際米遺伝子バンク」には、百カ国以上から集められた十万を超すサンプルが保管されている。二〇二五年までには、米の消費は七〇%以上増えると予想されているだけに、それぞれの品種の特性を研究しながら、より高収量の米の開発に取り組んでいる。

 飽食の日本では、日ごろ、米は「口に合わない」「いや、結構、おいしい」といった嗜好(しこう)の話題になりがちだ。ところが、地球規模では事情はまったく違うことを博物館は訴えている。

 午前八時から午後五時まで。土・日曜日休館。

(川村純子)

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