フィリピン沿岸警備隊(PCG)のタリエラ報道官(准将)は2日、中国海警局の巡視船2隻が同日にルソン地方パンガシナン州の沿岸線から約34カイリ(約63キロ)の海上に展開していることを確認したと発表した。1月上旬から海警局は、「モンスター船」とも呼ばれる世界最大級巡視船「海警5901」(165メートル)を含めた巡視船を、サンバレス西沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)よりさらに比沿岸に近い60~115カイリに展開し、「巡視および法執行活動」を実施し続けてきたが、今回さらにその活動域が比沿岸線に近づいた。昨年中国は昨年11月にパナタグ礁周辺の領海基線を一方的に宣言しており、それに基づく管轄権の主張をさらに一歩進めた格好だ。
PCGは2日、カナダ政府から供与された船舶探知システムで海警船を発見。それを受け、PCGのガバン長官は 直ちにPCG航空機「アイランダー」の派遣を指示した。同機は午前9時半ごろに110メートル級の大型海警船「海警3301」、89メートル級海警船「海警3104」=中国海軍江島型コルベット艦から転用 =の2隻を確認、無線警告を行ったが、海警船からの応答はなかった。
その後、比排他的経済水域(EEZ)内での中国による「違法な巡視の常態化」(タリエラ報道官) に反対する比の立場を強化するため、44メートル級巡視船「BRPカブラ」、「BRPバガカイ」=両船とも日本から調達=を急行させ、監視を開始した。
タリエラ報道官は声明で、「PCGはマルコス大統領の指示に沿って、国際法に則り比海洋権益の保護に力を尽くしている。われわれはこの『愛国的使命』に取り組む一方で、プロフェッショナリズムを尊重し、緊張の激化を避けるよう努めている」と説明した。
同報道官は前日にサンバレス州西沖に展開していた「海警3304」(110メートル)を、PCG最大巡視船である97メートル級巡視船「BRPテレサマグバヌア」(日本供給)によって「海岸線から110~115カイリに遠ざけることに成功した」と発表。また、その後に「モンスター船」が同海警船と交代したと説明していた。
▽戦闘準備哨戒を実施
一方、中国国防省は1日、「黄岩島(スカボロー礁の中国名)およびその周辺の領海と空域において、人民解放軍南部戦区の海・陸合同部隊が1月31日に『戦闘準備哨戒』を実施した」と発表。「黄岩島領海周辺の海空域での哨戒と警戒を継続的に強化し、国家の主権と安全を断固として守る」とした。同日、中国海警局も「1月31日に海警局が中国黄岩島の領海およびその周辺海域で法執行巡視を実施した」と発表しており、人民解放軍・海警局合同の活動だったとみられる。
海警局は「1月以来、黄岩島とその周辺地域の領海での法執行巡視を強化し続け、関係海域の管理をさらに強化し、国の領土主権と海洋権益を断固として守ってきた」としている。 (竹下友章)