「軍艦派遣も選択肢」 中国への対抗でPCG
スカボロー礁で中国海軍艦がPCG船を妨害したことを受け、PCG報道官「海軍艦の派遣を選択肢に」
4日にサンバレス州沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)近くで中国の海警局船・海軍艦が比公船に追尾や放水、衝突などの危険行動を取ったことを受け、フィリピン沿岸警備隊(PCG)のタリエラ報道官(准将)は7日、「比の排他的経済水域(EEZ)内で海軍艦を展開することは中国の戦略の一部となっている」との認識を示した上で、「国軍の提言と最高司令官(大統領)の決定次第だが、対抗措置として同海域に比軍艦を派遣することも選択肢だ」と述べた。軍事的緊張を高めないようにしながら南シナ海で法の支配を確保するため、ホワイトシップ(非軍艦)である巡視船が前面に立つことの重要性を強調してきたPCGが、海軍を前面に出す対応に踏み込んだ言及をした格好だ。8日の英字紙インクワイアラーなど各紙が報じた。
パナタグ礁周辺では先月、中国が一方的に自国の領海基線があると宣言。その宣言後に同礁周辺で初めて発生した4日の比中船衝突事件では、海警局船が漁業水産資源局(BFAR)の漁業取締船に衝突、放水したほか、これまでは後方に待機してきた中国海軍艦も前面に出てきて、PCGの97メートル級巡視船「BRPテレサマグバヌア」(日本から調達)に270メートルまで急接近するなどの危険操船を実施した。国家海洋委員会のアレクサンダー・ロペス報道官は「中国海軍艦が妨害行動でここまで接近したのはこれが初めて」と発表している。
タリエラ准将は政府の「ホワイトシップ戦略」について、「2012年にスカボロー礁で発生したにらみ合いに端を発し、それ以降3政権(ノイノイ、ドゥテルテ、マルコス政権)で採用され続けている」と説明した。2012年には、パナタグ礁で密猟していた中国漁船を比海軍艦が臨検したことをきっかけに、比中の艦船が2カ月にらみ合う事態に発展。比側が撤退した後に同礁は中国に占拠され、今も実効支配が続いている。
同准将は中国の戦略について「海上民兵、海警局、海軍は別々の組織のように見せかけて、中国軍(武装力量)の傘下にあり、切れ目なく作戦行動を展開できている」とし「沿岸警備隊と海軍を明確に区分する比とは対照的だ」と指摘。「PCGは比海軍の代わりはできない。中国海軍艦が比のEEZ内に進入していることは、非常に憂慮すべきことだ」と強調した。
国家安全保障会議のマラヤ事務局長補は中国海軍による妨害について「比は海軍艦を派遣する権利を有しているが、その行使を保留している」と述べている。(竹下友章)