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10月14日のまにら新聞から

過半数が比を支持 南シナ海問題で大統領

[ 1709字|2024.10.14|政治 (politics) ]

マルコス大統領「ASEANの過半数の国々は南シナ海問題で支持を表明した」

 ラオスで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会談で南シナ海問題について従来より一層強い対中メッセージを打ち出したマルコス大統領は帰国前に記者団に対し、「ASEANの過半数の国々の代表から比の立場への支持を得た」と報告した。

 大統領は具体的な国家名への言及を避けながら、「これらの国々からは、共同演習や船舶の派遣、継続的な協議、仲介役の申し出などの提案があった」とし、南シナ海に関する具体的な協力の方法について意見を交わしたことを明らかにした。その上で、「われわれが立場を明確に打ち出さなければ、こうした申し出は受けられなかっただろう」と成果を強調した。

 10日に大統領が中ASEAN首脳会議で「中国ASEAN関係は南シナ海情勢から切り離すことはできず、政治的な安定が保たれない限り、中国との経済協力を深めるべきではない」などと主張した後、ベトナムやシンガポール、タイがフィリピンへの支持を表明したと報じられている。

 南シナ海問題の透明性を高めることで国際世論を味方につける戦略をとってきたマルコス政権は、日本や欧米先進国からの支持を獲得してきた一方で、ASEAN諸国は対外発信で慎重な態度を取ってきた。そのため、「比はASEANから孤立している」との見方も出ていた。今回の首脳会議で一歩踏み込んだ発言を行ったことで、ASEAN諸国からも一定程度の支持を引き出した格好だ。

 ▽「域外国」の関与

 10日の中ASEAN首脳会議に続き、11日に開かれた日米中韓ロなど8カ国とASEANが参加する東アジアサミットでもマルコス大統領は南シナ海問題を議題に上げた。大統領は中国の艦船による比船・航空機への妨害・威嚇事件を挙げ、「南シナ海で緊張が続いているのは残念だ」と強調。「こうした行動は無視できない。南シナ海での紛争を本当に解決するために団結して取り組む必要がある」とし、南シナ海行動規範(COC)の早期採択のほか、海洋状況把握(MDA)の向上、海上での航行と通信の安全、南シナ海を航行する船舶に対する明確な交戦規則などを、東アジアサミットによる取り組みに含めることを提言した。

 同サミットで石破茂首相は「南シナ海でも軍事化や威圧的な活動が継続・強化されいる」として、深刻な懸念を表明。「国連海洋法条約(UNCLOS)に基づかない不当な海洋権益の主張や海洋における活動は認められない」として、中国の主張を全面的に退けた2016年の仲裁裁判所判断に比中が従い、紛争を平和的に解決することに期待を表明。フィリピンと共同歩調を取った。

 また、11日に開かれた米ASEAN首脳会議では、ブリンケン国務長官が「南シナ海と東シナ海における中国のますます危険で違法な行動を懸念し続けている」と非難。インド太平洋における航行の自由と上空飛行の自由を今後も支持していくことを表明した。同会議では、2025年に米国とインドネシアの共催で第2回米ASEAN海軍演習を実施するほか、米国によるASEAN事務局向けのサイバーセキュリティー研修を実施することなどが確認された。

 それに対し、中国外務省の毛寧報道官は、「米国をはじめとする域外の各国は南シナ海での兵器配備と軍事活動を増強し、対立を煽り、緊張を作り出している」と主張。「これらは南シナ海における最も大きな不安定要因だ」と批判した。

 ▽共同声明出ず

 今回のASEAN関連の主な首脳会議では共同声明は採択されず、代わりに議長声明が出された。

 13日に出されたASEAN首脳会議の議長声明では、南シナ海問題について、「加盟国から埋め立てや人命を危険にさらす行為を含む活動に懸念が表明された」とし、相互信頼の醸成、状況を複雑化させる行動の自制、およびUNCLOSをはじめととする国際法に則った紛争の平和的解決の重要性を再確認したことを報告。

 また南シナ海問題の平和的解決のフレームワークとして長年議論されているCOCについては、その基礎となる南シナ海行動規範交渉文書の単一草案に関する第三読会が行なわれたことを報告した。(竹下友章)

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