スカボローでまた放水 中国艦船が比公船2隻に
スカボロー礁で中国海警局船が自国漁民への物資補給をしていた比公船に放水。中国海軍艦も妨害に参加
農務省漁業水産資源局(BFAR)は8日、サンバレス州西沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)付近で、同局の違法漁業取締り船「BRPダトゥ・カバイロ」(全長30メートル)、「BRPダトゥ・サンデイ」(同)がフィリピン漁船への補給任務に就いていた際、中国海警局船3隻、中国海軍間1隻から放水砲の発射や至近距離での追尾などの含む妨害を受けたと発表した。
放水は比船には直撃せず、物的被害は報告されていない。BFAR漁業取締り船は妨害を振り切り、比漁船7隻と小型ボート16隻への物資補給に成功した。
同局は声明で、「漁業資源の管理と保全に関するすべての法律、規則、規制を執行するという任務に従う。比海域全体の巡視、および(南シナ海で比が権益を持つ)西フィリピン海(南シナ海で比が権益を有する海域)の比漁民への支援と援助の任務の遂行に関し、われわれは抑止されることはない」と述べた。
一方、海警局も8日に声明を出し、「中国は黄岩島(パナタグ礁の中国名)の近接海域に議論の余地のない主権を有しており、比に対し『侵害行為』をやめるよう要求する。海警局は法に従い断固として国家主権と海洋権益を守る」と述べた。
▽ASEANサミットへの影響
東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議出席のためにラオスに出発する前の演説で「西比海での最近の危険な事案を含め、先鋭化する地域の緊張と格闘している」と言及。「開かれ、包摂的で、ルールに基づいた国際秩序を推進するというわれわれの立場をサミットで主張する」と宣言した。
先月末には、南シナ海の西沙諸島の海域で操業していたベトナム漁船が中国の法執行機関船に襲撃され、負傷者が出る事件が発生。今回の大統領のラオス訪問日程では、ベトナム代表との首脳会談も予定されており、ベトナムとの海上保安協力に関する協力の進展にもより注目が集まりそうだ。
パナタグ礁は伝統的には比が実効支配下に置きながら、比中・ベトナムの漁民が共に漁業を営んでいた。しかし、2012年に比中間の艦船でにらみ合いが発生。比船が撤退した後に、中国は同礁を占拠している。
2016年の南シナ海仲裁裁判所判断は、フィリピン、ベトナム、中国の漁民に対し、同礁での伝統的漁業権を認めている。 (竹下友章)