「領有権主張の後退ではない」 PCG船一時帰還で海事評議会
PCGテレサマグバヌアをエスコダ礁から帰還させたことに関し国家海事評議会「領有権主張の後退ではない」
フィリピンの排他的経済水域にある南シナ海のエスコダ礁(サビナ礁)で中国船を約5カ月にわたり監視していた比沿岸警備隊(PCG)の最大巡視船BRPテレサマグバヌア(97メートル、日本供与)がパラワン島に帰還したことに関し、国家海事評議会(NMC)のアレキサンダー・ロペス報道官は16日、「領有権の主張が後退したということではない。テレサマグバヌアがエスコダ礁を去っても、ほかの監視手段がある」と強調した。政府の意思を示したものだが、船舶による監視活動が中断していることも認めた。17日付英字紙スターが報じた。
ロペス報道官は16日、テレビ局ANCのインタビューに対しても「別のPCG巡視船が現場に向かっているが、船名などの情報を開示することはできない」と述べている。また、巡視船テレサマグバヌアの帰還は主に一部の乗組員の治療とその他の乗組員の健康状態の確認が理由だとした。
エスコダ礁はマニラ、ナボタス、マラボン、カロオカン各市を合わせた面積がある。同報道官は「我々がすべき事は監視を怠らないこと。エスコダ礁だけでなく西比海(南シナ海)全体で何が起きているのかを把握することが重要だ」と述べた。今後も西比海における監視体制を維持する必要があると強調した。
比の非営利団体で安全保障研究機関であるIDSCのチェスター・カバルサ代表は「エスコダ礁は広大な海域で侵入路がいくつもあるため、中国側がアクセスを完全にブロックするのは困難だ」と指摘。2012年に比当局が艦船を引き上げた隙にパナタグ礁を中国が占有したようにはならないとの見方を示している。
一方、PCGのタリエラ報道官は巡視船テレサマグバヌアの乗組員の状況について「中国船の妨害によって補給が受けられなくなり、1カ月以上にわたり雨水で乾きをしのいだ。エアコンの排水パイプの水でさえ沸かして飲んだ」との報告を受けたと明かした。また、現在エスコダ礁周辺で確認された中国船は、気象状況の悪化により11隻だけだという。(澤田公伸)