「前例のない防衛協力」 5億ドルの資金援助発表
2プラス2で、米国がフィリピン防衛力強化に前例のない5億ドル(約774億円)規模の追加支援を発表
首都圏ケソン市の国軍本部で30日、フィリピンと米国との間の第4回外務・防衛閣僚間会合(2プラス2)が開かれた。夕方に開かれた会見でブリンケン米国務長官とオースティン米国防長官は、比国軍と比沿岸警備隊(PCG)の近代化支援に対外軍事資援助(FMS)を通じ「前例のない水準」(オースティン氏)である5億ドル(約774億円)規模の追加協力を行うことを発表した。南シナ海における中国のプレゼンス拡大を背景に、米国が一層の防衛関与の姿勢を示した格好だ。
追加協力5億ドルには、比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用施設への投資128億ドルが含まれる。これをブリンケン氏は「これまでの倍以上に増額した」と説明。また、昨年の2プラス2で打ち出した中長期の比防衛協力「安全保障部門支援ロードマップ」の内容を今回で決定したことも発表した。
オースティン氏は、米国際開発庁(USAID)がEDCA施設への救援物資の事前備蓄を今年中に行う計画であることを発表。一方、今回締結されるとの観測が出ていた、軍事機密共有の前提となる軍事情報包括保護協定(GSOMIA)については、今年末までに締結することを再確認したとした。
比米関係についてブリンケン氏は、「比米同盟はかつてないほど強固になっている」と強調。一方、中国については、「南・東シナ海における緊張激化をもたらす同国の行動に関し、比と懸念を共有している」と述べた上で、南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)補給に関する比中暫定合意が結ばれたことに歓迎の意を表するとともに、「中国は比の補給任務を妨害しないという約束を守らなければならない」と釘を差した。
暫定合意に則って27日に実施された補給を巡っては、「比側から補給の事前通知を受け、比船が食料・人道支援物資だけを搬入していることを現場で確認して通過させた」とする中国側と、「補給の許可を求めてもいないし、臨検を受けてもいない」とする比側で認識が対立。それについてマナロ比外相は「われわれが行ったのは、通知というより、『情報の交換』だ」と説明した。
また、米軍が中射程ミサイルを比に持ち込んでいることに中国が懸念を表明していたことについて、マナロ氏は「同ミサイルは防衛目的であり、対外攻撃を目的とせず、武力競争には結びつかない」との立場を説明した。
このタイミングで比への軍事支援を加速させることと、台湾有事への関係についてブリンケン氏は、「台湾海峡は世界の貨物船の5割が通過し、台湾では半導体の7割が製造されている。有事が発生すると世界中が影響を受ける」と述べて台湾問題の世界経済に対するリスクを強調。「比米および世界中の国々は台湾の現状を維持し、平和と安定を守ることに取り組んでいる」とした上で、「比米同盟は防衛的同盟という言葉が当てはまる」と説明した。(竹下友章、ロビーナ・アシド)