「RAA署名を期待」 2プラス2開催で元防衛相
比日2プラス2が7月8日に開催へ。来比した小野寺元防衛相はRAA署名に期待表明
フィリピン国防省は28日、比日外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を7月8日午前10時に首都圏マニラ市タギッグ市のシャングリラホテルで開催することを正式に発表した。22年4月に東京で開かれて以来2度目、マルコス政権になって初の開催となる。このタイミングで比を訪問していた議員連盟「次世代の防衛産業の構築と海外装備移転を抜本的に促進する会」の小野寺五典会長(元防衛相)は28日、首都圏パサイ市のホテルオークラで会見を開き、「マルコス政権で初の比日2プラス2の機を捉え、部隊間協力円滑化協定(RAA)が署名に至ってほしい」と期待を寄せた。
小野寺会長は同議連の和田義明衆議院議員、松川るい参議院議員と共に比を視察。25日にはマナロ外相、アニョ国家安全保障担当大統領顧問、28日にはテオドロ国防相を表敬し意見交換を行った。
▽殺傷性装備移転も
テオドロ国防相との会談について小野寺氏は、「防衛装備の移転は、レーダーのみならずさまざまな分野で日本の防衛装備の移転が効果的だと伝えた」と報告。さらに「今年日本の制度が変わり、共同開発・生産の製品について第三国移転が可能となったことを説明し、共同生産についてもフィリピンとの協議を進めたいと伝えた」とした。
3月の防衛装備移転3原則の運用指針改定により、日英伊で共同開発する第6世代ジェット戦闘機の第三国への移転が、国連憲章に則った移転装備品の使用を義務付ける協定を結んでいる国に限定して解禁している。フィリピンは2016年に防衛装備品・技術移転協定を締結しており、対象国となる。また、以前から共同開発・生産国パートナーへの装備品移転も可能となっており、これまで日本は米国と弾道弾迎撃ミサイルなどを共同開発している。
▽「一刻の猶予もない」
小野寺氏らは、日本初の防衛装備完成品の移転例となった防空警戒レーダーが配備されるラウニオン州のウォレス空軍基地を日本の国会議員として初めて訪問したほか、パンパンガ州のクラーク、バサ両空軍基地、サンバレス州のスービック海軍基地を視察。
それを踏まえ小野寺氏は「比の防空体制強化には一刻の猶予もないと強く感じた。現場の声を聞き、防衛装備協力を含めたフィリピン国軍と自衛隊の連携強化の重要性を改めて確認した」と説明。スービック海軍基地では「セカンドトーマス礁(フィリピン名アユギン礁)周辺の状況、特に今月17日の事案につき説明を受け、中国の行動に対し強い懸念を共有した」とした。
▽南シナ海と尖閣
17日に実施されたアユギン礁への比の補給任務では、中国海警局ボートが比海軍のゴムボートを取り囲んで衝突し、さらに中国職員は斧状の刃物で比ボートをパンクさせた。複数人で刃物を振り下ろす海警職員に素手で対応した比海軍職員のうち1人は、もみ合いの中で右手の親指を欠損した。
この事態に対し小野寺氏は「比と日本は中国から海洋で力による現状変更を試みられているという点で、同じ立場にある」と強調。2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件などを念頭に、「17日にセカンドトーマス礁で行われたような中国による暴力的な行為は、十数年前に日本の近海でも発生している。今でも日本の尖閣では、中国に対して同じように冷静な対応を海上保安庁が行っている。フィリピンの状況は他人事ではない。今回の中国によるフィリピン船舶に対する暴力的な行為を多くの日本人はひどい状況と思い、比を支持している」と述べた。
その上で、「RAA締結により幅広い防衛協力が可能となる。さらに、米国、豪州などの連携も含めしっかり検討していきたい」と意欲を語った。 小野寺氏に同行した和田義明衆議院議員は、南シナ海で比が権益を持つ海域を表す「西フィリピン海」という言葉を使用。「西フィリピン海における17日の中国の行為は海賊行為。このような中国による行為を非難する」とし「防衛装備、訓練、サプライチェーンを含むあらゆるフィリピンが必要な支援を供給できるように最善を尽くす」と請け負った。
同じく訪問団の一員として来比した松川るい参院議員は「比日は同じ脅威、シーレーン、戦域を共有している。従って防衛、特に防衛装備協力をより強化するのは自然なことであり、フィリピンだけでなく、日本の利益になる」と指摘。「防衛装備を受け入れることは、長期的関係を取り結ぶことを意味する。これは結婚したのと同じ。日本はフィリピンの最も信頼のおけるパートナーだ」と強調した。(竹下友章)