「共同で地域リスクに対応」 日米首脳会談共同声明
国賓として訪米している岸田首相がバイデン大統領と会談。共同声明で比日米防衛協力を推進すること明記
日本の首相として9年ぶりに国賓待遇で訪米した岸田首相は米時間10日、バイデン米大統領と会談を行った。その際に出した共同声明で両首脳は、「国連海洋法条約(UNCLOS)に反映された国際法と整合的な形で、全ての国が航行および上空飛行の自由を含む権利と自由を行使できる重要性」を強調。南シナ海で比への圧力を強める中国を念頭に、「南シナ海における海上・空中での危険な接触や、主張が対立する海洋地勢の軍事化、海上法執行船と海上民兵の危険な利用を含む、あらゆる力や威圧による一方的な現状変更に強く反対する」と表明し、「比日米3カ国で経済安全保障、経済強靭化を進めながら、3カ国の防衛・安全保障協力の強化を目指す」と明記した。
さらに中国を名指しし、「南シナ海における非合法な海洋権益の主張や、他国の海洋資源利用の妨害を下支えする危険でエスカレートしている最近の行動は、UNCLOSに反映される国際法とは整合していない」とし、中国の主張を全面的に退けた2016年の南シナ海仲裁裁判所判断が「当事国に対し、最終的かつ法的拘束力を持つ」と強調。「われわれは地域の海洋安全保障を支援し、国際法を堅持するため、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)のパートナー国と共同することを決意する」と宣言した。
一方、中国が「核心的利益の核心」と位置づけ、統一のために武力の使用も排除しないと明言する台湾問題については、「台湾に関する両国の基本的立場に変更はない」とし「世界の安全と繁栄に不可欠である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性」を改めて表明。「両岸問題の平和的解決を促す」とするにとどめた。
▽日米防衛協力を推進
南シナ海と同様に中国が大型海警局船を派遣して領有を主張する尖閣諸島については、バイデン大統領は武力攻撃に対する防衛義務を定める日米安全保障条約第5条を引用し、「核兵器を含むあらゆる能力を用いた揺るぎないコミットメント」を表明し、同条約が「尖閣諸島も適用対象になる」と改めて確認した。さらに両首脳は「尖閣諸島での長期的・平和的な日本の施政をむしばもうとする行為を含め、東シナ海における中国による力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」とした上で、「南西諸島を含む地域で同盟戦力の最適化が進んでいることを歓迎し、さらにこの取り組みを促進する重要性を確認する」と述べた。
日本の防衛省は、今年度にステルス戦闘機F35B飛行隊や地対艦ミサイル部隊を南西諸島に新設する方針。米太平洋陸軍のフリン司令官は今月3日に中距離ミサイルを指すとみられる「長距離精密射撃能力」を今年中にインド太平洋地域に配備すると発表している。
共同記者会見では、防衛装備品の共同開発・生産・整備に関する「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)を創設し、ミサイル開発などに向けた協議を行うことを発表した。
また、日本が英・豪と部隊間協力円滑化協定(RAA)を締結したことを念頭に、共同声明で日本と米英豪の安全保障枠組み「AUKUS」諸国との「緊密な2国間防衛パートナーシップ」を確認。AUKUS第二の柱である、安全保障と防衛関連の先端技術、産業基盤、サプライチェーン(供給網)で日本との協力を検討するとした。
一方で、同声明では中国との対話と協力への意思も表明。「インド太平洋における誤解・誤算のリスクを低減し、紛争を防止するため、首脳レベルを含め、中国との間の率直な意思疎通の重要性を強調する」とし「共通の関心分野では中国と協力する」との意思を表明した。(竹下友章)