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1月17日のまにら新聞から

教育、広告の外資規制も撤廃へ 大統領指示で上院議長動く

[ 1440字|2024.1.17|政治 (politics) ]

大統領の指示で上院主導で憲法の改正が行われることに。「公営事業」、教育、広告業での外資規制が立法によって撤廃可能に

 ズビリ上院議長は15日、マルコス大統領から憲法の経済条項の見直しを指示され、下院とも協議の上で改憲を進めることに合意したと発表した。同議長は15日付で上院のレガルダ副議長(財務委員長)、下院のアンガラ財務委員長と連名で改憲を求める上下両院合同決議案を提出した。現政権発足から、改憲の議論は下院で活発に行われていたものの上院が動かず流れてきた。それが今回、大統領主導で外資制限に限定した改正を上院主体で進めることで政府・両議会が一致した。

 改正案は、「公営事業」の運営事業者の外国資本比率を40%未満に制限し、その執行・管理役員を比人に制限する12条11項、宗教団体運営のもの以外の教育機関の外資比率を40%未満に制限する14条4項(2)、および広告業の外資比率を30%未満とし、執行・管理役員を比人に制限する16条11項(2)について、「法で別に定める場合を除く」という例外条項を入れる。また、資本規制のある教育機関については「基礎的教育機関」に限定する。

 ズビリ議長は声明で「憲法は現代的な要求に応じるために、絶えず見直されるべきだが、議会はまず立法を通じた解決を目指さなくてはならない」という立場を表明。

 「公営事業」の定義を狭めることで鉄道、通信、空港などの分野の外資規制を撤廃した改正公共サービス法(2022年発効)について「投資家に対する比の魅力を増やすことに成功したが、違憲立法審査の申し立てもある。こうした合憲性に関する問題に終止符を打つことには協力できる」とした。

 公共サービス法の改正では、電力送配電、石油パイプライン、上下水道、港湾、路上公共交通にいては引き続き資本制限が残ったが、今回の案で改憲された場合、立法によってさらなる規制緩和が可能になる。

 一方で、天然資源の探査・開発・利用に関する外資制限(40%未満)や、比の領海や排他的経済水域(EEZ)の海洋資源について「比国民が排他的に享受する」ことを定めた憲法12条2項の改正には踏み込まなかった。

 同条項は、比が主権的権利を主張する南シナ海の海洋資源を外国と共同で開発する事業を極めて困難にしていることで知られ、最高裁は同条項に基づき、アロヨ政権期に一部実施された比中越の石油公社による科学的海底調査に対し昨年1月、違憲判断を下している。

 ▽両院投票が発議手段に

 憲法17条は、改憲の発議の手段として①上下両院の4分の3の賛成②「憲法会議」による提案③有権者の12%による請願(国民イニシアチブ)――の三つを定める。

 今回の合同決議では、①の両院の4分の3の賛成による発議を通した改憲を目指すことが明記された。

 昨年下院で起こった改憲の動きでは憲法会議の招集を通じたものが目指されたが、メンバー選出のために行う選挙や委員報酬などで最大280億ペソの費用がかかるとの試算が出、「政治的資源の無駄遣い」との批判が経済団体などから噴出していた。

 また、「国民イニシアチブ」についてズビリ議長は、「国民イニシアチブは、両院制を不安定化させるとともにチェックアンドバランス(三権の抑制均衡)が脅かされ、憲法上の危機につながる可能性がある。国民イニシアチブを装った国内手続きの乱用による改憲の試みを防がなければならない」と警戒心をあらわにした。

 野党連合マカバヤンは国民イニシアチブの署名集めに、社会保障や補助金制度が悪用されていると指摘していた。(竹下友章)

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