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12月24日のまにら新聞から

殺傷性装備品の移転解禁 防衛装備移転三原則10年ぶり改定

[ 1665字|2023.12.24|政治 (politics) ]

日本政府が防衛装備移転三原則を約10年ぶりに改定。比など同志国に5類型に該当する範囲で殺傷能力のある装備品を移転することが可能に

 日本政府は22日、海外への防衛装備品の輸出や、同志国に無償で装備品を供与する政府安全保障能力強化支援(OSA)実施の根拠となる防衛装備移転三原則を9年8カ月ぶりに改定した。これに合わせて同三原則の運用指針も大幅に改定。フィリピンなど安全保障協力関係のある国との安保・防衛協力強化に資する装備品の海外移転について、殺傷能力を有する自衛隊法上の「武器」の移転が解禁された。

 一方、装備品輸出やOSAに適用される「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型制限は公明党との折り合いがつかず、維持された。類型の撤廃や拡大については継続して議論される。今度の改定で、5類型に属する装備品であって、かつ「本来業務の実施または自己防衛に必要な武器」を搭載するものの海外移転が可能になった。

 フィリピンは今年OSAの初適用国として沿岸警戒レーダーの供与が決定したが、比海軍はまにら新聞に対し、今年のOSAについて日本が政府開発援助(ODA)を通じて比沿岸警備隊に供与した大型巡視船のような艦船を要望していたことを明らかにしている。比海軍では米沿岸警備隊から退役ハミルトン級カッターを取得し、哨戒艦として運用している前例もあり、日本製大型巡視船の哨戒艦としての運用も視野に入れているとみられる。

 南シナ海で明確な武力攻撃に当たらない範囲で力の行使を強める中国は、海軍艦のほか、法執行機関や漁船という資格を持ちながら同時に中央軍事委員会の指導下の「武装力量(軍)」の一部門として軍事行動も行える海警局と海上民兵を活用する。

 日本から比への哨戒目的の艦艇や軍用機の移転が本格的に始まれば、そうした中国のグレーゾーン戦略に対抗し、南シナ海で比のプレゼンスを高めることに貢献できそうだ。

 また、日本外務省は22日、2024年度予算案を決定、OSA予算を今年の2倍の50億円に増やす内容となったことを明らかにした。来年度のOSA候補国にはベトナムやジプチのほか、フィリピンも名が挙がっている。今年はフィリピンに対する沿岸警戒レーダー供与をはじめ、マレーシア、バングラデシュ、フィジーの計4カ国へ警備艇などの無償供与が決定している。

 ▽「戦後最も厳しい環境」

 今回の殺傷性装備品の解禁は、三原則本文ではなく、それに付随する運用指針の改定によって行われた。同指針は2014年に策定されて以降、既に4回改定されている。さらに、約10年ぶりに改定された三原則には、「運用方針は安全保障環境の変化や安全保障上の必要性に応じて時宜を得た形で改正を行う」との文言が追加され、さらに指針の改定を行う政府の意思が明示された。

 同指針にはまた、「国際法に違反する侵略や武力の行使、または武力による威嚇を受けている国」に対して、自衛隊法上の武器・技術情報以外の防衛装備品の移転が可能との条項も追加された。

 昨年から日本政府がウクライナに供与している、防弾チョッキ、鉄帽(ヘルメット)、防護マスク、防護衣、小型ドローン、自衛隊トラック、高機動車、資材運搬車などの非殺傷性の装備品が該当するとみられる。

 改定された防衛装備移転三原則では、日本を取り巻く安全保障環境について、「一層厳しさを増している」という以前の表現が、昨年12月に策定された国家安全保障戦略を踏まえ、「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」という表現に変更。「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンの下、「同盟国・同志国等」と連携し、「地域の平和と安定を確保すること」が、「死活的に重要」との文言が追加された。

 防衛装備品の海外移転の機能については「特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止」し「国際法に違反する侵略や武力の行使または武力による威嚇を受けている国への支援」のために重要な手段だとの位置づけが新たに加えられた。「地域における抑止力の向上に資する」など、「抑止」という概念が新たに使用されるようになった。(竹下友章)

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