「一体感の強まり期待」 ようやく実施も事件相次ぐ
全国でバランガイ(最小行政区)議会・青年評議会選挙が行われた。各地で発砲事件相次ぐ
全国でバランガイ(最小行政区)議会・青年評議会選挙が行われた30日、ミンダナオ地方バンサモロ自治地域(BARMM)では選挙絡みと見られる発砲事件が相次いで発生し、候補者ら5人が死亡、10人以上が負傷した。
国家警察BARMM地域本部によると、南ラナオ州ブティグ町でバランガイ議長候補の夫が、同町ポクタンで対立するバランガイ議長候補である実の兄弟に殺害された。同州では別に1人が死亡しており、南マギンダナオ州ルンババヤバオ町など2カ所で2人が死亡と4人の負傷が報告されている。
また、マギンダナオ州ダトゥオディンシンスアト町でも2人が殺害され、3人が負傷。バシラン州ドゥブラン町ラヒラヒでは、バランガイ議長候補を含む6人が銃撃を受けて負傷している。同地域本部のノビレサ本部長は、同地域で選挙監視役を拒絶した教員に代わり、警察官1201人が選挙管理委員会の下で働いていることも伝えた。
▽首都圏の投票所では
同日、午前7~午後3時まで全国3万7341カ所の小学校・高校が投票所となり、選挙管理委員会の下で、教員やバランガイ関係者、ボランティア、教会関係者、一部警察官などが、円滑な投票実施に務めていた。バランガイ659~669まで、13バランガイの選挙会場となっていた首都圏マニラ市のアラウリョ高校では正午前、一部教室を除いて、そこまで混み合った状況は見られなかった。同校の中庭の広場には、高齢者や妊婦、身体障がい者向けのアシスタントブースも設けられ、ヘルプ人員が待機していた。
責任ある投票のための教区評議会(PPCRV)の同校派遣団42人の責任者の修道士ジェラルディン・デノガさんは、普段はカトリック系の大学で財務管理の仕事に就く。この日、校内2カ所にブースを設置、自身が投票を行う教室の場所が分からない人をアシストしていた。「シンプルなことが非常に難しい仕組みだ」と、投票者への同情を示した。
自身もバランガイ660―Aに住むデノガさんは、同バランガイにおける「最初の投票者だ」と笑った。「高齢枠」で早くに投票を済ませたという。投票にあたり、「よく知る候補者は2人いて、その他は信頼する友人から聞いた候補者を選んだ」。「バランガイ議長1人と議員7人のうち5人を選んだのみ。知らない人に投票はしない」との信条を口にした。
その他にも、オレンジ色のIDを首から下げた特定候補者1人につき、2人まで選定できる選挙立会人が、各教室の前におり、その数はひと際多かった。選管メンバーと教員は、いずれも教室内で投票を見守った。667番バランガイは2つの教室にまたがって投票が行われ、投票者約300人ずつを想定していた。
▽顔ぶれのリストも
選挙立会人のスセー・ビリェリャリスさんは、普段は支援者が日本人の比NGOのスタッフだ。自身も一般投票者が来る前の「午前6時に投票を済ませた」とし、投票済みのインクが付着した右人差し指を見せた。バランガイ議長は「それぞれ選んでほしい議員リストも作っている。選ぶ自由はあるが、ラインナップを参考にする人も多い」と教えてくれた。
投票を終え、家族や近所の仲間と学校前の木の下で涼んでいた子連れのグラシャ・デロスサントスさん(38)は、午前10時ごろに投票所に着いた。投票は「スムーズで、問題はなかった」と言う。
生まれ育ったバランガイ660番は住民500人に満たず、各家庭に候補者がおり、特定候補への集団投票は難しい現状を明かした。投票したバランガイ議長は「知り合い」で、候補者には「小さなバランガイなので、一体感の強まりを期待している」と話した。
▽待ちに待った選挙
バランガイ選挙は2018年5月の実施以降、20年5月に実施予定だったが、22年12月に再度23年10月へと延期されていた。青年評議員のみの有権者は15~17歳で、同評議員とバランガイ議員の双方は18~30歳、バランガイ議員のみは30歳以上が投票できる仕組みになっている。
今回のバランガイ選有権者は6783万9861人、青年評議会有権者は2142万550人と事前に予想されていた。バランガイ議長と青年評議会議長にはいずれも4万2001人ずつ、バランガイ議員と青年評議会議員にも29万4007人ずつの、計67万2016人分の役職が争われている。(岡田薫)