「中国の主張法的根拠なし」 G7が比の立場支持 越川大使報告
越川大使「G7、クアッド会合の成果文書は比の外交的立場を支持する内容」
大統領広報室は26日、今月19~21日に開かれた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)と、G7に合わせて開催された日米豪印4カ国枠組み「クアッド」会合の成果文書に関して、ガラフィル大統領報道長官が越川和彦駐比日本国大使から「比の外交的立場を支持する内容となった」という旨の書簡を受け取っていたことを公表した。
越川大使は書簡で「G7首脳は南シナ海における中国の拡張的な主張には法的根拠がないことを強調し、同地域での中国の軍事化に強く反対した」とし、南シナ海への人工島建設や海軍艦・海警局船艇派遣を行う中国の動きを念頭に先進7カ国が反対の声を上げたことを報告。
さらに「G7首脳らは2016年の南シナ海仲裁裁判所判断を紛争の当事者間解決の基礎となるマイルストーンであることを再確認し、経済的威圧に対する強靭(きょうじんせい)性を高めることで合意した」とし、南シナ海の約8割に権益を持つという中国の主張を全面的に退けた同判断の正当性がG7サミットの場で支持されたとともに、中国が関税などを通じ他国へかける圧力に団結して対処する方針を取り決めたことを伝えた。
またクアッド会合では「東シナ海や南シナ海を含むインド太平洋での力による一方的な現状変更の試みに岸田文雄首相が深刻な懸念を表明し、クアッドの首脳らはそうした試みに強く反対するとの立場を共有した」ことを明らかにした。
G7の共同声明では、中国への経済依存低減のためのサプライチェーン(供給網)の多様化、強靭化、透明化の方針がうたわれたほか、チベット、ウイグルでの人権問題や台湾海峡の安定の重要性にも言及された。
一方で、G7声明では中国経済とデカップリング(分断)しないことが明言され、懸念を直接表明しながら中国と建設的な関係を構築する用意があると硬軟両様の姿勢が示された。
これに対し、中国外交部(外務省)の孫衛東次官は21日、垂秀夫駐中国日本国大使を呼び出し、「中国の顔に泥を塗り、内政干渉を行った」と抗議。
これに対し垂大使は「中国が行動を改めない限り、懸念に言及するのは当然」と反論するなど、日本側は中国に対し「物言う姿勢」を示している。(竹下友章)