「条約として締結を」 RAA予備協議で上院議員
トレンティーノ上院議員「比日RAAは議会批准が必要な条約の形で締結されるべき」
越川和彦駐比日本国大使が比日の円滑化協定(RAA)の予備協議が近く開始されることを明らかにしたことを受け、比上院で議長に次ぐ力を持つとされるトレンティーノ上院ブルーリボン委員長(外務副委員長兼務)は23日、「上院での批准が必要な条約として締結されるべき」とする声明を出した。
同議員は「この協定が締結されれば、比国軍・自衛隊は訓練やその他の作戦のために互いの領土に部隊を派遣できる」とした上で、「西フィリピン海(南シナ海)で緊張が高まる中、インド太平洋地域における防衛協力を確実に促進する」とし、日米防衛協力の強化を歓迎する意向を改めて示した。
同議員は2月、自衛隊が比国内に一時的な軍事施設を持つことにも前向きな発言をしていた。
日豪RAA、日英RAAは議会批准の必要な条約として締結されており、条約として締結することは日本政府にとっても既定路線とみられる。比での条約批准権は上院が握るが、4月にはズビリ上院議長が上院の半数近い議員を引き連れ訪日し「締結に向け緊急に取り組む」と宣言するなど、比議会は極めて前向きな姿勢を示している。
RAAは訪問軍地位協定(VFA)と同様に訪問部隊の法的地位を定める。締結に当たって比側の懸念として想定できるのは日本の刑法に死刑が存在することだが、日豪、日英RAAは附属書で、訪問部隊は接受国内の刑事罰に服する場合も「残虐な刑を科されない」と明記されており、既存のRAAを下敷きにする限りその点は議会からの理解を得られやすい内容となっている。
日豪・日英RAAは、部隊が相互訪問して行う活動の内容を「両国が決定する協力活動であって接受国で実施されるもの」と一般的・抽象的に規定する。2017年、マラウィ市でイスラム過激派と戦闘が発生した際、比とVFAを持つ豪軍は偵察機を派遣するなどの軍事支援を行った。比日RAAが締結された場合、比国内武力紛争への自衛隊の介入も可能かどうかという点も議論されそうだ。(竹下友章)