「いまEDCA見直しの議論を」 協定更新来年に控え、旧マルコス政権閣僚ら
EDCA更新を来年に控え、旧マルコス政権で広報大臣を務めたタタド氏ら識者がEDCA内容の見直しを訴えた
首都圏ケソン市で17日、「不安定な基地と台湾問題」と題したフォーラムが開催され、旧マルコス政権で広報大臣を務めた元上院議員のフランシスコ・タタド氏=現マニラタイムズコラムニスト=らが、来年4月に締結10年目の更新時期を控える比米防衛協力強化協定(EDCA)に対し、反対派の立場から見直しと改定を求め議論した。
タタド氏は「来年はEDCAの更新年だが、両政府が何もしなければ無制限に自動更新される。だが比政府から切り出す可能性は低い」と問題を提起。2014年締結の同協定について、「議会の承認が不要な行政協定として締結されており、署名をしたのは当時のガズミン国防相とゴールドバーグ駐比米国大使。比米大統領の署名すらなかった」と指摘した。その上で、米軍の巡回駐留と米軍利用施設の設置を可能とする同協定について、「上院が承認した場合を除き外国基地、軍隊、施設を比国内に置くことを禁じる憲法の規定(18条25項)に違反している」と主張した。
同様の議論は協定調印当時でも起こっており、最高裁で合憲性が争われた。2016年、最高裁は1951年の比米相互防衛条約と1998年の比米訪問軍地位協定(VFA)の規定の範囲内として合憲判断を下している。それについてタタド氏は「最高裁の判断に異議を唱える計画がある」と述べた。
同氏は「比が外国軍事基地(米軍利用施設)を追い払う方法を見つけないと、中国による台湾武力統一に対する米国の軍事上の備えの一部に比は組み込まれてしまう」と懸念を表明。「本当の争いは米中間で起こっている。比は地政学的な覇権争いにおける米国の駒になるべきではない」と訴えた。
▽抑止は「ファンタジー」
外交アナリストのサス・サソト氏は「EDCAは中国の脅威に抑止力を持つ」という賛成派の主張を「実証的な根拠のないファンタジーだ」と批判。クラーク・スービック両米軍基地返還前の時期に「南シナ海の南沙諸島でベトナムが20カ所、中国は8カ所の海洋地形を実効支配したほか、台湾は太平島を占領した」とし、過去の米軍基地の存在が南シナ海での力による現状変更を抑止できていなかった事実を指摘し、「米軍施設は比にとって抑止ではなく、米国の敵国による武力攻撃を招く引鉄となる」と主張した。
主催者で著述家・地政学アナリストのウィルソン・リー・フロレス氏は「国連も認めている『一つの中国政策』を尊重しなければいけない。比政府は中国の国内問題である台湾問題から距離を取り続けるだけでそれができる」と訴えた。国連は1971年に中華人民共和国政府に中国の代表権を認め、中華民国(台湾)政府を追放する決議を採択している。
中華人民共和国政府を中国唯一の合法政府であると認める一つの中国政策は、比米ともに採用している。だが米下院のペロシ元議長は昨年8月に下院議長として25年ぶりに訪台し蔡英文総裁と面会。今年4月には蔡総統が訪米し、マッカーシー新下院議長と1979年に米国が中華人民共和国を外交承認して以来初となる米国内での台湾総統・米下院議長間の対話を行った。これに中国は大規模軍事演習や関係者の中国渡航禁止などの報復措置で対抗、緊張が高まっている。(竹下友章)