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5月15日のまにら新聞から

「重大な残虐行為を認識」 慰安婦救済を指示 マルコス大統領

[ 1484字|2023.5.15|政治 (politics) ]

マルコス大統領が元慰安婦らへの救済策を策定することを決定

 マルコス大統領府は13日、国連女子差別撤廃委員会が元慰安婦への救済措置を取るよう比政府に求めた3月の勧告に対し、「元慰安婦がよりよい暮らしができるよう政府が対策を講じ、期限内に包括的な対応策を策定する」ことを宣言した。同勧告には元慰安婦を補償する政府系財団の設置が明記されており、財団が設置されれば、加害国である日本が資金を拠出するかどうかも焦点になりそうだ。

 マルコス大統領は「20世紀の戦争で残虐行為を経験した勇敢な比女性」が「戦争による長期的かつ不可逆的な身体的・心理的影響を受けている」との認識を示した。国連女子差別撤廃条約締約国である比は勧告に半年以内に回答を出す義務を負う。回答期限は9月に迫る。

 マラヤ・ロラズはこれまでに、比日で日本政府からの賠償を求め訴訟をしてきた。しかし日本では「国際法の下訴訟を提起する法人格を有していない」として2004年に棄却され、比では最高裁が「外交問題は行政府によって解決されるべき」という司法自制の原則を適用し2010年に棄却。再審請求も14年に退けられていた。

 同団体は2019年に国連女子差別撤廃委に通報。同委員会は検討結果として今年3月8日に団体の主張を一部認める判断を下した。それを国連広報は「沈黙を強いられ歴史から消されていた女性たちの象徴的勝利だ」と伝えた。当事者が次々他界するなか、今回の大統領の発表で、ようやく比政府による本格的な救済措置を勝ち取った格好となった。

 同委員会は判断の中で、比は1956年に日本との賠償協定、平和条約に調印しているが、「交渉の中では『戦時中の性奴隷制度』(慰安婦制度)の被害者であった女性には一切言及がなく、女性たちへの賠償はなかった」と指摘。95年に日本政府が設立した「アジア女性基金」の事業については「同事業の『償い金』は民間からの寄付でまかなわれており、日本政府が法的責任を認めなかったことに反発した元慰安婦の多くが受け取りを拒否した」と消極的な評価を下した。

 ただ、アジア女性基金事業には日本政府が約5億円拠出した元慰安婦に対する医療・福祉支援事業と、首相によるお詫びの手紙の送付も含まれている。

 同委員会は「比政府は既に日本への賠償請求権を放棄している」ことに留意し、比が日本に賠償請求できないことを認める一方で、「比政府は男性の多い退役軍人には手厚い福祉を提供しているのに対し、戦時下の『性奴隷制』の生存者に支援を提供していないのは差別だ」という元慰安側の主張も認めた。

 団体が求める日本への賠償請求は退けながらも、比政府が戦後元慰安婦に十分な救済策を講じなかったことを認定し、それを条約違反と判断した形だ。

 同委員会は、比政府に対し同団体所属元慰安婦への「継続的な差別に対する謝罪と救済を含む完全な補償」を勧告。それ以外に一般的な措置として①性暴力を含む戦争犯罪の被害者を救済するための全国的な補償制度の確立②戦争被害者救済に関連する法律からの制限的・差別的な条項の削除③戦争犯罪、特に「戦時性奴隷制」の被害者女性を補償するための国家公認財団設立④「戦時性奴隷制」の犠牲者を記憶する記念館の設置⑤「戦時性奴隷制」の歴史教育を教育課程に含めること――を求めている。

 慰安婦制度は、邦人女性も働く軍管理下の公娼(こうしょう)制度として始まったが、アジア女性基金によると、比では前線の日本軍部隊が農村の女性を軍宿舎に強制連行し、一定期間監禁し性的暴行を加え続けるという「最も激しい暴力」の形態がひろく行われたという。(竹下友章)

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