「南シナ海で明白な権利侵害」 ASEAN首脳会議で大統領
ASEAN首脳会議で大統領「南シナ海での明白な比権利侵害」を強調
マルコス大統領は11日、最終日となる2日目の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で比の立場を主張した。南シナ海問題について大統領は、中国の名指しを避けながら「同海で最近発生した出来事」について「比の主権、主権的権利、管轄権に対する侵害であり、比国民、特に漁民・沿岸住民の安全と福祉に明白な影響を及ぼしている」と非難。「比が排他的経済水域(EEZ)で主権的権利を行使する能力を否定し、妨害しようとする試みがあろうとも、比は毅然として国連海洋法条約(UNCLOS)下で認められた海洋権益を守り続ける」と宣言した。
一方で、「南シナ海が次の武力紛争の場所とならないようにしなくてはいけない」と指摘。紛争の解決に向け、「南シナ海行動宣言=DOC、2002年採択=の実効的な実施に比は全力を尽くす」と宣言するとともに、拘束力を伴う南シナ海行動規範(COC)の早期締結を求めた。
DOCはUNCLOSをはじめとする国際法の順守を強調するほか、「現在無人である島、岩礁、浅瀬、湾およびその他の海洋地形への居住」を含む「紛争を複雑化・激化させる行動」の自制を定める。中国は2002年の採択以降もスカボロー礁など南シナ海の岩礁の人工島化、軍事施設建設を進めている。
また、2021年のクーデターで政権を掌握した軍が市民を弾圧しているとされるミャンマー問題について大統領は「解決は全ての関係者の包括的かつ建設的な対話を通じてのみ始まる」と主張。暴力の最大限の自制と即時停止を求めるとともに、ASEANが21年にとりまとめた、ASEAN特使派遣の仲介などを含むミャンマー問題の平和的解決に関する「5項目の合意」の履行を要求した。その上で、日米中韓やロシア、欧州連合を含むASEAN外部パートナーに対し、ASEANの努力を補完する協力を求めた。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻問題については、人道的危機と経済的影響、紛争激化による核兵器使用の可能性に「深い懸念」を表明。平和的解決を模索するよう求めた。今月始めの比米首脳共同声明で記されたウクライナの領土主権、紛争勃発前の国境線を支持する文言は入らなかった。
ASEANの機能については「地域の中心として大国間の緊張を管理し導く責任を負っており、国際秩序を形作る役割を主導しなくてはいけない」と強調。米国が推し進める同志国間の多国間協力については、「国際課題に対応する鍵ではあるが、共通の懸念に対する国際的な対応を策定するには地域的な視座を考慮しなくてはいけない」と注文を付け、米国一辺倒にはならない姿勢を示した。
▽ベトナム首相と会談
マルコス大統領は10日、ベトナムのファム・ミン・チン首相と会談を行った。両首脳は比の食料供給にとって重要な農業部門での貿易拡大で一致。また大統領は「両国関係は民間部門によって発展してきた。政府部門は民間に追いつくときだ」と指摘。「コメ貿易だけにとどまらず、両国の関係を強化するべきだ」と強調し、外務省間の対話から始め、両軍トップの交流につなげたい意向を伝えた。(竹下友章)