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5月5日のまにら新聞から

相互防衛のあり方を規定 初のガイドライン承認

[ 1752字|2023.5.5|政治 (politics) ]

比米国防トップが相互防衛ガイドランを正式承認。多国間協力への拡大方針を提示

 マルコス大統領率いる訪米団は3日(米時間)、米ワシントンDCにある国防総省本部(ペンタゴン)を訪問し、ガルベス国防相とオースティン米国防長官が現在の安全保障環境を踏まえた比米相互防衛のあり方を規定する「相互防衛の指針」(比米ガイドライン)を正式に承認した。日米間では1978年に最初のガイドラインが策定され、97年と2015年に改定されているが、比米間での相互防衛ガイドラインの策定は今回が初めてとなる。

 米国防省が公表した同ガイドラインの要旨には、「南シナ海の全ての海域を含む太平洋において、両国の沿岸警備隊含む公船、航空機、軍隊への武力攻撃があった場合、1951年比米相互防衛条約(MDT)の4条および5条に規定される相互防衛行動を発動する」ことが明記された。

 MDT4条には「太平洋における」いずれかの国への武力攻撃に対し、「共通の危機に対処するための行動」を取ることが定められ、同5条には具体的な発動範囲として「両国の大都市圏、太平洋における両国の管轄権内にある島しょ領土、両国の軍隊、公船、および航空機が含まれる」と規定されている。

 米国政府は過去、南シナ海が条約対象に含まれるかについて曖昧な態度を取ってきた経緯があり、アテネオ大のレナト・デカストロ教授によると、2012年のスカボロー礁沖での比中艦船にらみ合いによって比中対立が決定的となった時期、当時のヒラリー国務長官は南シナ海が条約の対象になるか明言を避けた。南シナ海が条約発動対象となる「太平洋」に含まれるとの解釈を示したのは、ポンペオ国務長官時代の2019年以降だ。

 沿岸警備隊への攻撃でも条約が発動されると米政府が明言したのは、今年2月の中国海警局船による比沿岸警備隊へのレーダー照射事件以降。今回それが発言レベルではなく、両国が承認する文書に書き込まれた。

 同ガイドラインはまた、安全保障上の脅威のある領域として陸・海・空のほか「宇宙空間、サイバー空間」を明記。それらの脅威は「非対称戦争、ハイブリッド戦争、非正規戦争、グレーゾーン戦術の形態を取る」との認識が示された。サイバー攻撃能力を拡充し、海洋進出に海上民兵を活用しているとみられる中国を強く意識した内容となった。

 さらに「問題の共有に基づき、比米2カ国の防衛活動への第3国の参加やオブザーバー参加の機会提供を含む、3カ国間、多国間の安全保障協力を優先する」ことが規定された。

 米時間1日に出された比米首脳共同声明では「比日米間、比豪米間の3カ国協力の枠組みを発足させる」ことに期待が表明されており、米国を中心とする複数の2国間同盟関係「ハブ・アンド・スポーク」で構成される現行のアジアの安全保障形態から、ネットワーク型の防衛関係に発展させようとする米国の戦略が色濃く反映された。

 海上の防衛協力については、「合同哨戒を含む」海上での共同活動を通じ、海上安全保障および両政府が連携して海洋の情報を収集・共有する海洋状況把握(MDA)の協力を拡大することが明記された。

 また、地域・世界の危機に対処するため「同盟の枠組み内で役割、使命、能力の共通の理解を培う」との方針も盛り込まれ、日米ガイドラインと同様に有事の際の両軍の役割分担を固めていく指針が示された。

 比米防衛協力強化協定(EDCA)については、「インフラ改善」、「海上安全保障の追加的な進展」のほか「合意された場所への米軍の巡回駐留」を通じた両軍の相互運用性の強化がうたわれた。

 4月の比米外務・防衛閣僚間会合(2プラス2)で発表された向こう5~10年の「防衛分野援助ロードマップ」については、「威圧に抵抗するため、統合抑止力を高める優先的な防衛プラットフォームと武力パッケージの特定を通じ、比国防力近代化に緊密に連携する」と説明された。

 両政府の意思決定については「プロセス、コミュニケーション手続きを発展させる」とし、比米共同計画と共同取り組みを活性化させるため、合同分析、机上演習などを行うことが定められた。

 大規模破壊兵器の拡散および化学、生物、放射能、核兵器による攻撃にも言及され、「対処するための能力構築活動を追求する」ことが記された。(竹下友章)

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