防衛協力枠組み発足を 比米首脳会談でマルコス大統領
ホワイトハウスで比米首脳会談。共同声明では、比日米間・比豪米間の3カ国協力発足に期待
米国を公式実務訪問中のマルコス大統領は比時間2日、米ワシントンDCホワイトハウス大統領執務室でバイデン米大統領と首脳会談を行った。会談中バイデン大統領は「われわれは新たな課題に直面しており、(課題に対処するにあたり)あなた以上によいパートナーはいない」と発言。「南シナ海を含めた比防衛への鉄壁の関与」を表明した。マルコス大統領は「比は現在おそらく世界で最も複雑な地政学的状況に置かれている」とし「こうした状況で、比にとって唯一の防衛条約締結国に目を向けるのは当然だ。南シナ海・アジア太平洋で高まる緊張に直面する中、果たすべき役割と両国関係を強化し、再定義する必要がある」と指摘した。
会談後に発表された共同声明では、平和・安全保障分野の中で、「比日米間および比豪米間の3カ国協力の枠組みを発足させる」ことへの両首脳の期待が表明された。具体的な防衛協力の形態には言及されなかったが、ロムアルデス駐米比国大使は2月に多国間の南シナ海合同哨戒も「議論中のアイデア」と述べている。また、3カ国協力の形態が今後防衛協定に発展するかどうかも注目される。
共同声明は台湾とウクライナ問題にも言及。台湾海峡については「世界の安全保障と繁栄にとって欠くことのできない要素として、その平和と安定を維持することが重要であること」を両首脳は確認した。
一方、ウクライナについては「紛争がインド太平洋地域の食料・エネルギー安全保障に悪影響を及ぼしていることに留意しながら、国際的に認められた国境におけるウクライナの主権、独立、領土一体性を支持する」との文言となった。マルコス大統領はロシアのウクライナ軍事侵攻が国際供給網に混乱をもたらしていることから、武力紛争の早期終結を最優先し、領土問題は当事国の交渉に任せるという立場。供給網問題は明記されたが、ウクライナを軍事支援する米国側に寄った内容となった。
南シナ海問題については、「同海を含む太平洋でのフィリピンの軍、公船、航空機に対する武力攻撃で1951年比米相互防衛条約が発動する」と明記されたほか、南シナ海における「海上・上空の航行の自由に対する揺るぎない関与」を強調。南シナ海での中国の主張を全面的に退けた2016年の仲裁裁判所判断を「留意する」とした。
▽比米ガイドライン採択へ
米大統領府によると、両首脳はこれまで策定していなかった相互防衛条約のガイドランの採択に向けた作業を続けていることを発表。同ガイドラインは陸海空、宇宙、サイバー空間での協力を強化するため、優先事項、メカニズム、手続きを定める。草案では、2国間防衛計画の促進を含む相互運用性向上、情報共有、防衛能力開発強化、そして「新たに発生した安全保障課題」に関する協力を進めことが記されているという。
また、米国が比に装備品の供与を行う計画が明らかにされた。4月に移転が決まり比に向け航海中のサイクロン級巡視船(55メートル)2隻に加え、米議会の承認次第アイランド級巡視艇(34メートル)2隻、プロテクター級巡視船(85メートル)2隻、戦術輸送機C―130H3機の比移転が決定する。
昨年11月にハリス副大統領がパラワン島に訪問した際に発表された海上法執行能力向上に対する750万ドルの支援、比沿岸警備隊の船舶交通管理システム更新プログラムへの支援についても首脳レベルで再確認された。(竹下友章)