「改憲して核武装を」 エンリレ大統領顧問が提言
エンリレ顧問が上院で「核保有を禁ずる現行憲法2条8項を削除すべき」と提言
上院の改憲公聴会で22日、現在大統領法律顧問を務めるフアンポンセ・エンリレ氏(99)が、核保有を禁ずる現行憲法2条8項を比が核武装できるよう削除すべきと表明した。
エンリレ顧問はアキノ政変(エドサ革命)での国軍離反の立役者。公聴会で「コリー(アキノ)政権でこの国に課された核保有制限条項の削除を求めたい。憲法の中で、これは最も深刻で不要な条項だ」と発言。「現代の世界では、小国は核によって大国から身を守れる。比はより柔軟な選択肢を持つべきだ」とした。
その上で「もし購入する余裕があるなら、当然核保有すべきだ。国民が他国に蹂躙(じゅうりん)されず、他国のトゥタ(子犬)やアリピン(奴隷)にならないためだ」と強調。さらに「われわれはイランや北朝鮮より早く核兵器を保有すべきだった」と述べた。
上院のパディリャ改憲委員長はその後の会見で「われわれは核の時代に生きており、こうした議論も否定できない。議会も検討すべき時がきている」と述べ、理解を示した。
ただフィリピンは、核兵器の保有を米国、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国に限定する核不拡散条約(NPT)に1972年に加盟しており、東南アジアの非核化を定めた東南アジア非核兵器地域条約(バンコク条約、97年発効)にも2001年に批准しているため、核保有には改憲のほか両条約からの脱退という高いハードルがある。なお、比米防衛協力強化協定(2014年締結)の4条6項には米軍利用可能施設への核兵器の配備・備蓄の禁止が明記されている。
改憲の手続きについてエンリレ大統領顧問は、下院で法案が通過した全国での委員選挙を伴う改憲発議のための憲法会議の召集を「多額の支出を伴い、国民の負担を増やす」と批判。「国会で改憲の発議をすべきだ」と提案した。憲法会議を通じた改憲プロセスには95億ペソの費用がかかると推計されている。
憲法17条には上下両院の3分の2の賛成で招集できる憲法会議を通じた改憲発議のほかにも、両院の4分の3の賛成投票により国会が直接改憲案を発議できることが規定されている。(竹下友章)