「父の炎 絶やさず未来へ」 故マルコス大統領105周年記念
故マルコス大統領の生誕105周年を祝う式典が開催。戒厳令期の弾圧被害者からは非難の声も
故マルコス元大統領の生誕105周年に当たる11日、元大統領の故郷である北イロコス州バタック市および遺体が埋葬されている首都圏タギッグ市の英雄墓地で記念式典が開かれた。バタック市を訪問したボンボン・マルコス現大統領は演説で「父が残した炎を絶やさず、未来につなげてほしい。そうすれば父の肉体は滅びても、父の夢、知恵、祖国への愛は再びよみがえるだろう」と参加者に呼びかけた。
また、同式典では13日に65歳の誕生日を迎えるマルコス現大統領の誕生会も同時に開催。参加者はイロコス地域伝統の誕生日歌「パダパダカム」を歌い、長男のサンドロ・マルコス下院議員が市職員手作りの花輪を父の頭に被せるなど、地元のマルコス家支持者による温かいムードの中、大統領父子の誕生を祝った。イメルダ夫人は英雄墓地の式典に参加した。
故マルコス元大統領は1965年12月30日から86年2月25日まで、大統領として歴代最長の20年を務めた。1972〜81年には戒厳令を敷き、権威主義体制下で急進的な農地改革、経済成長、財閥解体、治安安定策を推進。73年に記録した経済成長率8・9%はその後の政権でも塗り替えられていない。その一方、戒厳令期に当局により3240人が政治的理由で殺害、3万4000人が拷問を受けたと国際人権NGOアムネスティは報告している。また、政権末期には「アジアの病人」と呼ばれるまで比経済は落ち込んだ。
▽「ばかみたい」
マルコス大統領は7日、父の誕生日が日曜日に当たることから、翌12日を北イロコス州で故マルコス元大統領生誕を祝う特別日(非労働祝日)とする大統領布告第53号を出した。
10日の英字紙スター電子版によると、有名映画監督で70年代に4年間投獄され拷問を受けた経験があるジョエル・ラマガンさんはこの決定を「ばかみたいだ」と率直な言葉で非難。「なぜ人殺しの誕生日を祝日にするのか。殺された人々や拷問を受けた人々の頬を打つようなものだ」と被害者の心情を語った。
また、故マルコス政権下の当局による強制失踪の被害者とされる活動家ジョナス・ブルゴスさんの母エディスさんは「故マルコス大統領のために祝日を設けることで、未来にどんな模範を示せるのか。祝日は将来の子どもたちの手本になる人物を記念するべきだ」と疑問を呈した。(竹下友章)