反左派急先鋒が司法相就任へ 「赤タグ付」のレムリヤ議員
ボンボン氏が、反左派急先鋒のヘスス・レムリヤ下院議員を次期政権の司法相に指名
大統領への当選が確実視されているボンボン・マルコス元上院議員はこのほど、ヘスス・レムリヤ下院議員=カビテ州選出=を次期政権の司法相に指名した。指名を受けレムリヤ議員は23日、「受諾する」と返答した。
同議員は2019年から現在まで与党院内総務代行、10~13年に下院議員、16~19年にはカビテ州知事を務めてきた。2020年5月のテレビ局ABS―CBNへの免許更新を巡っては、更新に強硬に反対した議員の1人。
ボンボン氏に近く、反左派急先鋒として知られるレムリヤ議員は3月4日、大統領選に立候補していたレニー・ロブレド副大統領がカビテ州で約4万7000人を集めたとされる大規模集会の直後、聴衆が「共産党関係者らによって動員されている」と発言。こうした赤タグ付に加え、「ロブレド陣営が1人500ペソで票買いを行っている」とし「証拠は提示できないが、見れば分かる」などと主張していた。同集会を呼び掛けたロブレド支持の有志グループや参加者は「事実無根」と批判していた。
24日のCNNフィリピン電子版によると、同議員はこうした一連の物議を醸す発言について5月24日、「率直にものを言う性格を変えるのは難しいが、より控えめになる必要がある」と述べた。
レムリヤ議員は、司法相に就任することで個人やグループをテロリストとして指定する権限があるテロ防止委員会を率いる立場になる。同議員は赤タグ付けについて、「反乱やテロ活動は新人民軍(NPA)によるものだが、犯罪には主犯のほか共犯、従犯者がいる。おそらく彼らはテロリズムに共感することそのものが犯罪行為だと気がついていない」と語った。
また同議員は「若者は従犯者になりやすく、学内でNPAに勧誘される学生もいる。だから、フィリピン大と治安部隊との間で結ばれている不可侵協定などあってはならない」と強調した。
1989年に締結されていた国軍とフィリピン大との「不可侵」協定を2021年1月に政府が一方的に破棄したことを受け、比大の大学自治を保護することを目的に上下両院に提出されていた法案があったが、同年10月にレムリヤ議員の強硬な反対により撤回された。
▽さらなる不処罰生む
人権団体カラパタンは23日、ボンボン氏による指名を受けて「驚くには当たらない」とした上で「事実上、共産主義勢力との紛争を終わらせる国家タスクフォース(NTF─ELCAC)の先鋒として、これまでにロブレド副大統領や先住民学校などに対し、狂信的な赤タグ付を行ってきたレムリヤ議員の閣僚入りは、さらなる不正と不処罰を生む」との声明を発表した。(岡田薫)