4候補が麻薬戦争継続を明言 「ただし超法規的殺害なしで」
ロブレド、パッキャオ、モレノ、ラクソンの4候補はそれぞれの立場から麻薬戦争継続を主張
22日夜に放送された民法GMAニュースの大統領候補インタビュー番組で、今年5月の大統領選に立候補しているレニー・ロブレド現副大統領、元ボクシング世界6階級制覇王者のマニー・パッキャオ上院議員、マニラ市のイスコ・モレノ市長、パンフィロ・ラクソン上院議員の4候補はそれぞれの立場から、ドゥテルテ政権下で始まった麻薬撲滅政策(麻薬戦争)について「超法規的殺害のないかたちで継続する」との意志を表明した。
23日の英字紙スター電子版によると、昨年は防疫強化措置下でも麻薬捜査中の容疑者殺害件数は増加を見せ、麻薬逮捕者数と麻薬リハビリ施設入所者数が過去最大。裏を返せば、なお麻薬が流通しており、麻薬撲滅にはほど遠い状態ということになる。
その原因についてラクソン候補は「ドゥテルテ政権は取り締まりに集中しすぎ、麻薬使用の予防や薬物依存症者の社会復帰のための施策をなおざりにしていた」と指摘。「麻薬撲滅政策はより包括的に実施すべきだ」と主張した。
ロブレド候補も同様の考えで、麻薬戦争に対する姿勢について、ドゥテルテ大統領と「同じ熱意だが、違う手段で取り組む」という自身の姿勢を表明。
違法薬物取り締まり省庁間委員会(ICAD)の共同委員長を務めた経験から、麻薬戦争をより包括的な取り組みにするための方法論として、大統領府麻薬取り締まり局(PDEA)に代わって危険薬物委員会(DDB)にICADの主導権を持たせるべきという持論を改めて提示した。
モレノ候補は「マニラ市では指名手配犯であっても容疑者を殺害せず逮捕することに取り組んできた。人権を守り、麻薬戦争を徹底的に継続するという(市政での)方針を国家規模で実施する」との方針を表明。市政での実績をアピールしつつ、容疑者殺害の防止と厳格な取り締まりの両立は可能との立場を示した。
昨年7月にドゥテルテ大統領と袂(たもと)を分かつまで現政権の麻薬戦争を擁護してきたパッキャオ候補は「フィリピン人を一つにしたいが、麻薬使用者には非常に強い怒りを持っている。麻薬に関与したものが罰せられなければ、一般国民にも悪影響がある」と述べ、取り締まりと制裁に重きを置く現政権に近い立場を表明。その上で「道端で麻薬を売る末端の売人より、麻薬密造業者の取り締まりに注力すべきだ。正しい方法で戦争を継続していく」と述べ、取り締まりのターゲットを麻薬流通のより川上にシフトさせるべきとの考えを示した。
▽ICCへの協力は
ドゥテルテ政権が2019年3月に超法規的殺害への予備調査開始に反発し離脱していた国際刑事裁判所(ICC)について、4候補は全員「再加盟する」と宣言。しかし、ICCによるドゥテルテ現大統領への捜査・訴追に協力するかどうかという質問では回答が分かれた。
パッキャオ候補は「犯罪が確認された場合は協力する」と条件付き賛成の立場を表明。ロブレド候補は「ドゥテルテ氏が起訴されるべきか否かに言及する立場にない」とし、明言を避けた。以前から「過去の政権の批判をしない」と明言しているモレノ候補は捜査に協力しないとし、ラクソン候補は協力すると回答した。
現政権発足から21年末までで、麻薬捜査中の容疑者殺害は公式統計でも6215件。政府は現在うち52件を不当な殺害だったと認めている。人権団体の推計では、超法規的殺害の犠牲者は3万人に上る。(竹下友章)