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11月23日のまにら新聞から

台風ヨランダ

[ 1168字|2014.11.23|気象 災害 (nature) ]

日本から来比した熟練職人、渡辺ノエルさんと臼井克也さんが被災地復興に協力

溶接を指導する渡辺さん(右から2番目)と臼井さん(右端)=11月7日、レイテ州ドゥラグ町で写す

 壊滅的な被害を受けた台風ヨランダの被災地レイテ州で、日本在住歴が32年というフィリピン人溶接工と日本人の屋根工が協力して、暴風雨で崩壊した建物の再建に努力し、貴重な現地貢献を続けている。

 日本の「職人の技(わざ)」を発揮して被災地復興を支援する2人は、山梨県からやってきた渡辺ノエルさん(51)と臼井克也さん(42)。「自分が持ってる技術が少しでも復興の役に立てば」と2人は口をそろえる。

 「スーパーマンだったら良かったのに。被災地の映像を見て涙が出てきた」。山梨県甲府市に住む渡辺さんは19歳でフィリピンから来日、長野県の温泉街で働いていた。仲居さんだった日本人の女性と恋に落ち、結婚した。

 渡辺さんは台風ヨランダがフィリピンを襲った時、故国の被災地の様子を伝えるニュースを日本で見ていた。屋根や壁が壊れている街の映像を見て、「自分が日本で学んだ技術を使って復興に役立てないか」と強く思っていた。そんな矢先だった。日本の国際協力機構(JICA)から、被災地支援事業に参加してくれないかと声がかかった。「これがチャンスと思い、即決しました」と渡辺さんは語る。

 台風ヨランダの想像を絶する強風と高潮は、計約114万戸もの家屋を全半壊させる大被害を与えていた。トタン板製の屋根は散りじりに吹っ飛び、コンクリート製の壁さえも次々と破壊していた。飛んできたトタン板が当たり死傷した犠牲者もいた。

 一方、職人歴25年という臼井克也さん(42)は被災地で活動を始めた初日の今年11月7日、建物造りの基本となる「直角の計り方」を座学で教えた。ひもとくぎを使って直角を引く方法で、電卓と巻き尺だけで直角を図ることもできる。これは日本の小学校でも教わる方法だが、正確な角度が強度を保つのにかかせないため、屋根作りだけでなく、全ての建設で重要な基本の作業だという。

 臼井さんら2人は、レイテ州ドゥラグ町の公立高校と東サマール州バランギガ町にある農業学校で12月21日まで、技術教育技能開発局(TESDA)の職能訓練コース卒業生やTESDA講師計21人に指導をする。ドゥラグ町で2人の指導を受けているロイド・レリオスさん(24)は「高い技術をたくさん学びたい。いつかは1人前の職人になって台風で被災した家族を支えたい」と話した。

 事業期間の2カ月は、熟練の職人技術を完全に学ぶにはあまりにも短い。しかし、事業を主催するJICAは、日本から派遣されてきた職人2人の活動や指導内容をビデオで撮影し、TESDAの教材・マニュアルにして活用するなど、フォローアップをする予定という。

 臼井さんは「中学校3年の長男が『誇りに思う』と言って送り出してくれました。期間は短いが、精一杯頑張ります」と意気込みを語ってくれた。 (鈴木貫太郎)

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