台風ヨランダ(30号)
日本の民間団体が被災地レイテ州タナワン町で炊き出し。鶏肉料理など振る舞う
太平洋戦争中、フィリピンで戦死した旧日本兵の遺骨収容活動などを続ける日本の民間団体が1日昼、台風ヨランダ(30号)で被災したビサヤ地方レイテ州で炊き出しをし、被災者約400人に鶏肉料理などを振る舞った。
この団体は、特定非営利活動法人(NPO)「戦没者追悼と平和の会」(塩川正隆理事長、佐賀県みやき町)。
塩川理事長(69)が12月初旬、同州タナワン町マガイ・バランガイ(最小行政区)を視察した際、「(11月8日の)被災以来、イワシの缶詰と即席めんだけの食事が続いている。肉類が食べたい」という被災者の声を聞き、「戦争中、比の人々には大変な迷惑をかけた。炊き出しで喜んで頂けるなら」と実施を決めた。
メニューは、住民の要望に応える「フライドチキン」と栄養バランスに配慮した「野菜の煮付け」。米飯にジュース付きで、同バランガイの住民約600人を上回る700人分を用意した。
バランガイ議長のディエゴ・ベルミソさん(60)は「親類の支援のない被災住民は魚肉類を買えず、支援食料頼りの生活を続けている。炊き出しは大変ありがたく、私も住民も腹一杯頂いた。余った分は夕食分として、皆で分け合う」と話した。
州都タクロバン市に近いタナワン町では、約2千人の死者・行方不明者が出た。海に面したマガイ・バランガイは、全域が高潮被害に遭い、家屋を失った住民の大部分は現在もテント生活を強いられている。
炊き出しのため年末の29日に再来比した塩川理事長は「被災地では仕事がなく、支援なしでは生きていけない状態が続いている。支援がもっと広がってほしい」と呼び掛けた。
戦没者追悼と平和の会は2002年、太平洋戦争中にレイテ島に派遣された旧日本兵や遺族により結成され、比などで戦没者の遺骨収容や遺品返還に取り組んでいる。(酒井善彦)