台風ヨランダ(30号)
比日の専門家が被害調査結果を報告。東サマール州ギワン町を襲った波は約13メートル
日本の公益社団法人、土木学会とフィリピン土木学会を中心とする学官民合同の調査チームが16日、首都圏マニラ市のホテルで、台風ヨランダ(30号)被災地での被害調査の結果を報告した。調査チームによると、東サマール州ギワン町の太平洋側沿岸部を襲った波の高さは約13メートルに達したことが分かった。
調査チームは同町太平洋側沿岸部で砂浜に打ち上げられた樹木など、がれきの位置を元に波の高さを計算、測量した。調査チーム団長の田島芳満・東京大学教授(社会基盤学)によると、ギワン町付近の海域は水深が深く、高潮による水位上昇は少なかったとみられる。しかし、台風の力を遮る遮蔽物がなく波の威力がそのまま直撃したため、高波による被害が拡大したと考えられるという。またギワン町とは対照的に、レイテ州パロ、タナワン両町などは、台風の進路に東サマール州(半島)があっため、高波の力が抑えられたという。
同チームによる調査の結果、タクロバン港を襲った高潮は高さ6・4メートルに達していた。高潮の水位上昇と波の高さを加えた数値を比較すると、同港よりもギワン町の方が高いことが分かった。しかし被災者の証言によると、水が引くまでの時間はタクロバン市内が約1〜2時間と最長で、ギワン町は30分以内だったという。
一方、レイテ州ドゥラグ町の南10キロ地点は台風の通過地点となったもようで、東風が弱まっていたため、高潮による水位上昇が比較的、低かった。
田島教授らは今後、被災地で撮影された動画などの提供を比側から受け、さらに詳細な調査を進める予定。台風ヨランダ通過後、被災地での被害調査は比日両国研究者がそれぞれ独自に行ってきたが、両国土木学会が共同で調査を行い、正式に結果を報告するのは今回が初めて。総合建設コンサルタント会社「オリエンタルコンサルタンツ」が調整役となり、合同調査が実現した。
合同調査チームは12日から4日間かけてサマール、東サマール両州各地やレイテ州パロ、タナワン両町など海岸部で測量を行った。日本側6人、比側7人の計13人が参加した。
調査チームがタクロバン港で実測した高潮の高さは6・4メートル。この高さは、伊勢湾台風級の台風が満潮時に来襲した場合を想定し、3メートルの高潮に耐えられるよう設計された、東京湾の堤防よりも上回る。(鈴木貫太郎)