台風ヨランダ(30号)
環境保護団体が台風災害の原因や問題点を分析、政府の指導力不足などを指摘
環境保護市民団体「カリカサン」は21日、台風ヨランダ(30号)による大規模災害の原因や問題点について独自の分析を発表、政府の緊急時対応のまずさや指導力不足を指摘した。
カリカサンが指摘した原因、問題点は①災害時の通信手段について対策が取られていなかった②避難施設の整備や避難計画の策定が不十分だった③災害発生後、政府の緊急対応が取れていない④長期的な災害対策が不完全⑤開発政策による自然破壊が進んでいる⑥被災地がもともと貧困地域だった││など。
カリカサンの指摘によると、災害発生時には通信網遮断が予測されるが、政府、自治体は衛星通信や超短波ラジオなど代替通信手段を事前に用意できていなかった。また、サマール州やレイテ州の都市部は海抜が低く地形的に台風の影響を受けやすいことが分かっていたにもかかわらず、政府は沿岸部の住民にのみ避難を促し、都市部での被災者の増加を招いた。避難施設は、学校やバスケットコートなど既存の施設が利用されたが、高潮の影響を受け、破壊された。烈風や高潮といった災害に耐え得る避難施設を事前に建設する必要があった。
災害後、政府による支援物資配布は遅れ、いち早く被災地に入ったのは民間支援団体や国際団体だった。被災から13日たった21日現在も、東ビサヤ地域や、ビサヤ地方イロイロ、カピス、ルソン地方パラワンといった被災各州のすべてに支援物資が行き届いていない。
こうした状況下で、国際支援団体の比政府への信頼は失われつつあるという。現在、被災地救援に各国から約8900万ドルの支援が寄せられている。外務省によると、そのうちインドネシアからの200万ドルのみが比政府を通しての寄付という形を取っている。他の35カ国は自国の援助機関か非政府組織(NGO)を通しての支援になっているという。
アキノ大統領は、裁量予算から230億ペソを被災地支援に捻出するとしているが、今のところ、支援物資は量的に少なく、復興も遅々として進んでいない。カリカサンは、資金の大部分が被災地へ届く途中で政府の後援企業や政府関係者のポケットマネーに消えている可能性があると指摘する。
政府の進める開発政策による自然破壊も、台風災害を拡大する要因だという。カリカサンによると、土地開発や干拓によって沿岸のマングローブが年々減少している。マングローブは70〜80%ほどの波浪を吸収するという。比の民間環境保護団体による2009年の調査によると、レイテ島には海岸線全体の0・9%しかマングローブが生育していないという。
今回被災したルソン地方マスバテやビサヤ地方北サマール、ボホールの各州は、人口の40〜50%が貧困層という。東サマール、レイテ両州も貧困層が多い地域で、金銭的余裕のない社会階層が影響を受けているため、被災地の復興がかなり遅れる可能性もあるという。
カリカサンは声明で「アキノ大統領の指導力不足」を指摘し「国家的な災害や緊急事態に際して、効果的な指導力を発揮できる政府を求めていかなければならない」と締めくくった。(加藤昌平)