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11月12日のまにら新聞から

台風ヨランダ(30号)

[ 1155字|2013.11.12|気象 災害 (nature)|ビサヤ地方台風災害 ]

食料と水が不足し、支援物資配布場所前に朝早くから被災者が長蛇の列作る

商業施設のがれきから食料を探す被災者=11日午前7時すぎ、レイテ州タクロバン市で写す

 ビサヤ地方レイテ州タクロバン市では、猛烈な台風ヨランダ(30号)直撃から3日間が経過した11日も、救援物資を求める住民が朝早くから空港のゲート前に長蛇の列を作った。中には夜明け前から待つ人も。空港から約6キロの全壊した大型商業施設へ行ってみると、倒壊した壁の下に隠れた食料を盗み出す被災者でごった返していた。

 「食べる物がない。見つけた物は全部持ってきた。家族のためにやっているんだ」。崩壊した食料売り場から食料、飲料水、洗剤など生活用品を盗み出したマルロ・マカベンタさん(20)は、そう語気を強めた。午前5時から食料を求めて商業施設までやって来た。上半身裸のマカベンタさんは、店の前に駐車したペディキャブ(サイドカー付き自転車)と食料品売り場の間を汗だくになりながら、何度も往復していた。ペディキャブの荷台には、炭酸飲料水1・5リットルボトル1ダースとコメ、カップラーメンなどが山のように積まれていた。

 コンクリート製の屋根と壁が崩壊し、壊滅状態となったこの商業施設では、10歳以下の小さな子供から大量の荷を軽々と担ぐ成人男性まで、さまざまな被災者ががれきの下から食料品などを探し出していた。タクロバン市の隣町パロ町に住むレイ・サルタスさん(51)は、無断で商品を取り出す行為が犯罪だと自覚していた。しかし、「取らなければ、食料がない」と切迫した生活状況を強調した。

 パーペトラ・サバルダンさん(52)は、夫のレオパルドさん(54)ががれきの中から食品を探している間、確保した物資の見張りをしていた。台風襲来に備えて、自宅にコメ10キロと水18リットルを用意した。しかし、それも10日午後に底を突いたため、夫が商業施設から食料を「調達」する決断をしたという。「緊急物資の到着を待ちたいけれど、もう食料と水がない」と複雑な心境を吐露した。

 11日午前、ロハス内務自治、ソリマン社会福祉開発、ガスミン国防各長官がタクロバン市に到着し、被災地の支援態勢強化を図っている。しかし、同市周辺の被災地に対する救援物資の配給場所は依然として、タクロバン空港の1カ所に限られている。またセブ市内などからの物資輸送も、国軍輸送機「C130」3機の供給のみに頼っている状態だ。

 大型商業施設につながる道路では警官が交通整理をしていたが、食品を盗み出す住民を見ても見ぬふり。自身も東サマール州の住民で被災したという警官は「上司から取り締まるように指示を受けていない。本音を言えば、同じ被災者として同情する部分もある」と静かに語った。

 タクロバン市では10日深夜から11日朝にかけて、断続的に小雨が降った。湿気を含んだがれきであふれる町や通りは、前日よりも広い範囲にわたり腐乱臭が漂っていた。(鈴木貫太郎)

気象 災害 (nature)