型枠工事業セミナー開催 特定技能制度での送り出し
日本型枠工事業協会とAAAトレーニングセンターが特定技能制度での型枠工事業セミナーを開催
首都圏パサイ市のワールドトレードセンターで22日午後、特定技能制度での型枠工事業に関するセミナーが開催された。日本へのフィリピン人技能実習生や特定技能制度での労働者送り出し機関であるアドバンス・アビリティー・アシスタンス(AAA)トレーニングセンターが主催した。日本型枠工事業協会(東京都港区)の宇野繁光常任理事らが招かれ、型枠工事業を含む建設業に関する特定技能制度の概要や、日本の型枠工事の工法や現場で働く日本人や比人労働者らの声が紹介され、日本の建設現場での就業を目指す同センターの比人訓練生や比人労働者ら約200人が参加した。日本の型枠工事業に関するセミナーが比で開催されたのは今回が初めて。
セミナーではまず、日本型枠工事業協会の鹿野直哉課長が日本の建設業における特定技能制度の導入について概観を説明した。
特定技能制度は2019年4月から導入されている新しい在留資格で、深刻な人手不足と認められている介護や建設、ビルクリーニングや農業、漁業など16分野で一定の専門性や技能を有している外国人人材を労働者として受け入れる制度。特定技能1号と同2号があり、1号では技能水準と日本語能力水準を測る試験に合格する必要があり、通算で上限5年間の在留期間が認められるが家族の帯同は認められていない。今年6月時点で日本で特定技能資格で働いている比人就労者が2万5311人と在日比人全体の8%を占めているという。
鹿野課長は特定技能制度下の建設業で働くメリットとして「日本語教育や安全・技能教育を支援機関や現場で学ぶことができるほか、自身の技能やキャリア向上が期待できる」と強調した。また、日本の建設業における安全装備や安全第一意識など優れた実践の知識も吸収できると付け加えた。
次いで登壇した同協会の宇野繁光常務理事はまず型枠工事について具体的に解説した。同常務理事によると、鉄筋コンクリート建造物やコンクリートを流し込んで基礎土台を作ったり、建物の躯体形状を造る時に行う型枠工事は、鉄筋の骨組みとベニヤ板を設置していくのが主な仕事で、型枠大工が人の手で行う建設工事でも非常に重要な工程。型枠工事の流れを紹介したパワーポイント資料やビデオも上映し、型枠加工図の作成から、型枠パネルの加工やスミ出し、建て込みやコンクリート打設、解体作工事などといった過程を詳しく説明した。
またビデオでは現場で働く日本人型枠大工らの声も紹介し、自身の努力で技能を向上させることができる職種であることや、自分たちが関与した巨大なビル建造物が都心でそびえている様子を見ると、自身や家族たちがその達成感や仕事の重要性にプライドを持つことができるとの感想が映し出された。
講演の後の質疑応答では参加者から「日本の現場で禁止されていることは何か」や「地震が起きたら作業中の職人たちはどうなるのか」、「職場での医療保険の適用範囲はどこまでか」など具体的な質問が相次ぎ、宇野常務理事が「地震だけでなく、強風の時にも対応が規則などで定められている」などと日本の職場の安全基準について紹介した。
▽ウィンウィンの関係に
セミナーに参加していたAAAトレーニングセンターで日本語講座に参加して3カ月目というマナラン・エリオットさん(29)はブラカン州で工場作業員として働いていたが、日本の建設業で働くことも選択肢の一つだとし「たくさんの情報が得られたセミナーは素晴らしかった。やはり日本のような安全な国で働きたい」と日本就労に期待を込めた。また、やはり同センターで日本語を学ぶカガット・サルワガンさん(32)は出身のマウンテンプロビンス州でも型枠作業を含む建設現場で働いた経験を持っておりセミナーについて「日本の型枠技術をぜひ吸収し、自分の技術を向上させたいと思った」と高く評価していた。
AAAトレーニングセンターの渡辺泰久代表は「フィリピン人労働者には日本の技術を習得して高給の日本で働いてもらい、フィリピンに残っている家族を助け家を建てたり車を買ったりして豊かになって欲しい。また、少子化が進む日本の受入企業も人手不足が解消するので、日本の受入企業とフィリピンの労働者がまさにウィンウィンの関係を築くことをお手伝いできれば」と事業の抱負について語っている。(澤田公伸)