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6月27日のまにら新聞から

「最後のピースそろった」 初の直接投資が本格始動

[ 1380字|2024.6.27|経済 (economy) ]

阪急電鉄と住友商事がLRT1を運営するLRMCと技術協力覚書を締結。初のJICA・阪急の海外鉄道運営事業が本格始動

阪急、住友、LRMC間の技術協力覚書締結式=26日、首都圏マカティ市デュシタニホテルで竹下友章撮影

 阪急電鉄と住友商事は26日、軽量高架鉄道1号線(LRT1)の運営・保守を行うライトレール・マニラ・コーポレーション(LRMC)と技術協力覚書を締結した。国際協力機構(JICA)と阪急が4月に住友からのLRMC株式譲渡を通じて出資することに合意したことを受け、実現した。今回の覚書締結で、運用効率の改善、待ち時間の短縮や旅客輸送能力の向上を目指すほか、土地開発利益還元や運賃箱外収入、都市開発計画など幅広い協力を進める。日本の民鉄の運営ノウハウの比への移転が本格的に始まるかたちだ。

 首都圏マニラ市の署名式には、阪急電鉄の上村正美専務取締役、フィリピン住友商事の西尾英之社長、LRMCのホセマリア・リム社長兼CEOのほか、バウティスタ運輸相、遠藤和也駐日本国大使、JICAの廿枝幹雄理事、JICA比事務所の坂本威午所長など官民の要人が多数出席した。

 JICAの廿枝理事は「この事業はJICAとっても阪急にとっても鉄道運営・維持管理分野で初の海外投資だ」と指摘。「比鉄道協力の最後のピースだった運用・維持管理への直接投資に踏み込んだことで、JICAは比鉄道近代化のすべての面を支援できるようになった」と強調し、この投資がさらなる日本企業の誘致をもたらすことに期待を寄せた。

 バウティスタ運輸相は「この事業は日本企業に比の大規模輸送事業への投資を説得するためのショーケースとなるだろう」と喜びを表し、「LRT1カビテ延伸事業の部分開通を控えるこの時期に、この追加支援は非常に役に立つ」と述べた。

 同相はまた、「これ以外にJICAに直接投資を期待するインフラ事業はなにか」とのまにら新聞の質問に「JICAが決めることだが」と前置きしながら「首都圏地下鉄、南北通勤線でも同様にJICA出資が実現してほしい」と希望を述べた。

 ▽支援継続を約束

 遠藤大使はスピーチで、「この事業は日本企業による質の高いインフラの海外展開の一例だ」と指摘。「交通システムの改善は国際社会で首都マニラの名声も高め、引いては比全体の経済開発にも寄与する」と経済全体への波及効果を強調した。

 その上で「日本政府は様々な方法を通じ、引き続き比鉄道網開発に協力するとともに、JICAや民間企業と協力しながら必要な支援を続けていく」と請け負った。

 ▽共に経営する立場に

 坂本所長は「比には最長の人口ボーナス、ASEANトップの成長率、堅実なマクロ経済、高い国債格付けと好条件がそろっているが、渋滞はASEAN最低水準だ」と指摘。「東京都とマニラ首都圏はほぼ同じ面積で、人口規模も近いが、東京には鉄道が80路線以上あるのに対し、首都圏は3線しかない」と述べ、比の鉄道網の圧倒的な不足を強調した。

 通常は円借款を行うJICAが今回直接投資に踏み込んだ意義について、「借款だと返済を取り立てる立場だが、出資者になると責任をもって共に経営する立場になる」と説明。「これによって、JICAの技術協力やネットワーク、パートナーシップが最大限活用される」とし「これでわれわれはカイビガン(友人)からカパミリャ(家族)になった」と関係の深化を形容した。

 さらに、「4月の比日米首脳会談で『ルソン経済回廊』構想が打ち出されて最初の具体的進展だ」と説明した。(竹下友章)

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