欧州GSPプラス延長へ 27年まで特恵関税継続 パスクアル貿易産業相が発表
パスクアル貿易産業相は、今年末に適用期限が迫っていたEUから比に対する関税優遇政策「GSPプラス」の延長の提案が欧州議会・欧州理事会から支持を受けたことを明らかにした
比シンクタンク「ストラトベースADR」が主催する会議「ピリピナス・カンファレンス」に登壇したパスクアル貿易産業相は22日午前、欧州連合(EU)が途上国に付与する一般特恵関税優遇制度(GSPプラス)について、EU行政を司る欧州委員会が提出したGSPプラスの比などへの適用を4年間延長する提案が、欧州議会およびEUの最高意思決定機関である欧州理事会の「支持を受けた」と明らかにした。現行の比に対するGSPプラスは今年末が適用期限となっていた。
GSPプラスは、途上国の中でも持続可能な開発や人権保障関連の国際条約を批准している国に与えられ、比の関税免除対象は6274品目に及ぶ。
同相は「これは比にとっていいニュースだ。比に立地する輸出企業はさらに4年間特恵関税を享受できる」と喜びを表し、比の投資環境向上への取り組みを促進する決意を改めて表明した。
EUのGSPプラスを巡っては、ドゥテルテ前政権の麻薬撲滅政策(麻薬戦争)下で発生した超法規的殺害など人権問題が欧州議会で取り上げられ、20年9月に議会は「人権侵害の改善がみられなければ関税優遇措置の剥奪も辞さない」との決議を採択。22年2月にはさらに比政府による「赤タグ付け」や、ネットメディア・ラップラー代表のマリア・レッサ氏(21年ノーベル平和賞受賞)とドゥテルテ政権下で逮捕・勾留された麻薬戦争批判の急先鋒デリマ元上院議員への「政治的弾圧」などに対する非難決議を採択。欧州委員会に対し、比への特恵関税の取り消しを要求した。その際、欧州議会では議員から「独裁者の息子」であるマルコス候補=当時=が大統領選の世論調査をリードしていることにも懸念が表明されていた。
こうした状況下で、事実上ドゥテルテ氏の後継者として政権を引き継いだマルコス大統領は、昨年9月の国連演説で「人権問題に高い水準の説明責任を果たす」と宣言。11月には人権を尊重し予防・更生に重点を置いた新麻薬撲滅政策「BIDA」を開始。12月に欧州訪問した際には、「比EUビジネスラウンドテーブル」に出席し、GSPプラス適用条件となる人権・労働基本権に関する27の条約の順守を宣言するなど、国際社会に対し人権問題の改善のアピールに力を尽くしていた。(竹下友章)