「さらなる発展の先頭に立つ」 比日本商工会議所50周年
フィリピン日本商工会議所が設立50周年を迎える。運輸相、PEZA長官らが参加し祝福
首都圏マカティ市で9日、フィリピン日本商工会議所の設立50周年記念式が開かれた。式には比政府からバウティスタ運輸相、比経済区庁(PEZA)のパンガ長官ら、日本からは越川和彦駐比日本国大使、国際協力機構(JICA)フィリピン事務所の坂本威午所長、日本貿易振興機構(JETRO)マニラ事務所の中村和生所長、マニラ日本人会の高野誠司会長(フィリピン住友商事社長)らが出席。約500人の関係者が一堂に会し、同所50年の歩みを祝した。
比日本商工会議所の下田茂会頭(丸紅フィリピン社長)はスピーチで、同所の歴史を回顧。卜部敏男元駐比日本国大使(在任1969~74)の任期中に、故・田中角栄元首相の訪比に先立って商工会議所開設が提言され、中邑松太郎初代会頭(三井物産)の下1973年に設置された経緯を振り返り、「開所の2カ月後に田中元首相とマルコス元大統領の会談が実現した。今年、マルコス・ジュニア大統領の政権下でゴールデンアニバーサリー(50周年)を迎えることができたのは幸甚の至り」と喜びを表した。
同会の設置により日本企業と比政府の関係が緊密化する中で、50年前に約12億ドルだった比日貿易額は2022年に約234億ドルに、1996年に約28億ドルだった日本企業の対比直接投資残高は2022年に約165億ドルに拡大したほか、設立当初61社だった商工会議所の会員が現在「在外商工会議所でも有数の670社」にまで増加し、「比に30万人以上の雇用を生み出している」と50年の成果を報告した。その上で、「われわれは先達の努力への感謝を胸に日本企業の先頭に立ち、次の50年のさらなる発展に向け努力する」と決意を表明した。
バウティスタ運輸相は「国交正常化から67年間、比日は調和の取れた関係を強化してきたが、その背景にはJICAによる継続的な支援があった」と強調。「JICAの支援によって比は世界でもトップクラスの政府開発援助(ODA)受け入れ国の一つとなっており、これまでにJICA支援の運輸インフラ事業の事業総額は1兆5000ペソに達した」と報告した。
その上で、マニラ国際空港の保守・運営事業の民営化に言及。「来年頭にも事業委託契約を締結する」との見通しを示した上で、「現在6社が手を上げているが、完全外資の参入も可能だ」として日本企業の参入も呼びかけた。
▽友好関係の由来
越川大使はスピーチで「商工会議所の充実した会員企業数は、比の市場と若い労働力が魅力的であるだけでなく、比がアジアの供給網のハブとしての地位を築いている証拠だ」と祝福。その上で、現在の「豊かな比日関係がどこに由来するか」にも言及した。
70年前、戦時中に妻子4人を日本兵に殺されていながら「比の友人として末永く恩恵をもたらすであろう日本国民への憎しみを、子孫と国民には私から受け継いでほしくない」として日本人戦犯の特赦を決断した故キリノ元大統領による「歴史的赦(ゆる)し」、そして、深田祐介著「炎熱商人」のモチーフとなった住友商事マニラ支店長射殺事件(71年)に象徴される、反日感情が根強く残る戦後の比で苦難の中ビジネスに取り組み続けた「先人たちの努力」の二つを、大使は「今日われわれが享受する豊かな比日関係」の由来として挙げ、「戦後の和解の過程を忘れることなく両国に利益のある社会・経済活動を育むことは、先人に対するわれわれの責任だ」と強調した。
式にはほかにも、パスクアル貿易産業省、フラスコ観光省、アルバノ駐日大使がビデオメッセージを寄せた。(竹下友章)