「農漁業開発で貧困削減を」 332億ペソの融資承認
世界銀行は農務省の比地方開発計画の拡大に6億ドルの融資承認
世界銀行は3日までに、農務省の比地方開発計画の拡大に6億ドル(約332億ペソ)の融資を実行することを承認した。この事業は農漁業事業者の市場アクセスを向上することで所得を増加、貧困を削減することを目的とし、受益者は全国80州32市・640町の中小零細農漁業者63万3000人となる見込み。
同計画は、過剰な中間業者の中抜きにより事業者の収入となる卸売価格が低廉に抑えられる一方、末端価格が高騰するという比の第1次産業の構造的問題の解消に、生産者の市場アクセス改善を通じて取り組む。事業内容には、倉庫、乾燥、冷蔵、輸送などのポストハーベスト設備の導入や、気候耐性のある道路、橋、かんがい設備などのインフラ整備への投資のほか、事業者、協同組合、自治体への補助金事業、農水産業の病害予防事業、女性参画促進の取り組みも含まれる包括的な計画となっている。
大統領が農務省を兼務し、農漁業従事者所得向上、食料自給率上昇、食品末端価格の安定化の同時達成を目指すマルコス政権にとって柱となる事業の一つと言えそうだ。
英字紙ビジネスミラー電子版などによると、世銀のヌディアメ・ディオプ比担当責任者は「比の貧困層の約60%が農業に従事している。農業・漁業部門の成長を加速させることは、国家全体の開発と貧困削減につながる」と第1次産業における生産性向上の重要性を指摘。世銀の高田美穂農村開発専門官は「この事業は生産からマーケティングまでのバリューチェーン(価値連鎖)全体の改善を通じ、農漁業事業者の競争力と収益力を高め、最終的には所得向上をもたらす」と説明した。(竹下友章)