持続可能性に7.5億ドル融資 再エネ発電やプラゴミ削減を支援
世界銀行が、気候変動対策などへの投資促進を目的とした7億5000万ドルの融資を承認
世界銀行はこのほど、気候変動対策など比の持続可能なプロジェクトへの投資促進を目的とした7億5000万ドルの融資を承認した。
世銀は13日の声明で「経済回復を加速させ、長期的な経済成長を促進させるフィリピンが、環境保全と気候変動へのレジリエンスを高める政策改革を行えるよう新たな融資支援を承認した」と述べた。
同融資は、再生可能エネルギー事業への民間投資や温暖化ガス排出量を削減するグリーン物流の促進、プラスチック廃棄物の削減管理、農業における気候変動リスクの軽減などを目的としている。
同行フィリピン担当のカントリーディレクター、ディアメイ・ディオップ氏は再生可能エネルギーについて「とてつもない潜在能力を持つ」と述べた上で、「外国直接投資の促進や許認可プロセスの合理化など、この分野への投資を促進する政府の行動がこの潜在能力を引き出すだろう」と期待を込めた。また「再生可能エネルギーの促進は気候変動の影響を大きく受けるフィリピンに対し、エネルギー安全保障の強化やグリーン雇用の創出、電力のアクセス改善など多くの利益をもたらす」と説明した。
比は2040年までに再生可能エネルギーの電源割合を全発電量の50%まで引き上げることを目指している。
世銀は声明で「26年以降の石炭火力発電の段階的な縮小へ向けて、太陽光や風力への投資を増大させ、再生可能エネルギーへの投資に資する強靭な政策環境を整える必要がある」と指摘した。
また同融資は小規模農家への作物保険の普及を支援するプログラムも対象で、比農作物保険委員会の運営も強化する計画という。「国家予算と農業部門に対する気候関連災害リスクの軽減も支援する。収穫物への保険が適切に設計され、農家所得の安定化や貧困削減、食料生産者のセーフティーネットの提供に貢献できる」と付け加えた。
世銀によると、フィリピン、中国、インドネシア、タイ、ベトナムが海洋に流出させるプラスチックの廃棄量が全世界の5~6割を占める。比では年間170万トンのプラスチック廃棄物が発生していると推定されている。
世銀はこの課題について「28年までにプラスチック包装廃棄物の最大80%を回収することを大手企業に義務付ける拡大生産者責任法(ERP)の実施を支持する」と強調。「ERP法の下では廃棄物管理の財政負担が事業者になるため、企業が生み出す廃棄物の回収、分別、処分、清掃に掛かる公的資金を節約できる」と説明した。
世銀は22年3月現在、政府開発援助(ODA)において比第3位のパートナーであり、融資や助成金はODA全体の約23%を占める。政府は今年、191億ドルのODAを獲得する見込みで、そのうち92億ドルを世銀のような多国間開発パートナーが占めるという。(沼田康平)