合同探査は「中国のわな」 上院ナンバー2が警鐘
トレンティーノ議員が「南シナ海比中合同探査は中国が海洋進出を強める口実になる」と警告
前政権で交渉が打ち切られていた南シナ海における比中合同資源探査計画の交渉を来月にも再開すると外務省が発表したことについて、上院で議長に次ぐ発言力を持つとされる上院ブルーリボン委員会のトレンティーノ委員長は2日、「中国が調査船を装いさらに海洋進出を一層強めるための『わな』かも知れない」と警告した。
さらに、「これは外交関係問題であるため交渉には上院も携わるべきだ」と発言。上院の条約批准権を念頭に入れた発言とみられ、交渉後に両政府が結ぶ協定は憲法問題に深く関わる内容になることは避けられないことから、行政権の範囲内の「行政協定」なのか、議会の承認が必要な「条約」の一種になるかという議論を巻き起こす可能性もある。
トレンティーノ委員長はラジオ番組で、最高裁が1月に下した2005年の比中越合同海底調査に対する違憲判決に言及し、比中合同探査が合憲となる条件として「監督権は比側が持ち、(探査を担う合弁企業の)持ち分比率は少なくとも比60%、中国40%でなくてはならない」と指摘。
その上で、同委員長は「もし合意に(中国の主張を退けた)2016年仲裁裁判所判断を認識し、比が大半以上の持ち分を有する旨が織り込まれたら素晴らしい」としながら、中国による「わな」の可能性に言及。「中国は協定を悪用して科学調査船や調査員を装った海洋進出を行い、その行為を正当化しかねない」と警鐘を鳴らした。
比憲法12条2項は、全ての天然資源を国有とし、その探査、開発、利用は完全な国の管理・監督下に置き、受注企業は国内資本率60%以上であることを義務付ける。
比中合同資源探査の対象としては、パラワン島から西約200キロにあり、2016年に国際仲裁裁判所から比の排他的経済水域(EEZ)内と判断されたレクト堆が最有力。
同堆の資源埋蔵量は原油1億6500バレル、天然ガス3兆4000億立方フィート(約962億立法メートル)と推計されており、27年以降の枯渇も取り沙汰される国内唯一の天然ガス田であるマランパヤガス田の代替となることが期待されている。(竹下友章)