経済協力総額130億ドル 2万4000人の雇用創出へ
公式訪日の成果は「予想を超える130億ドル」と大統領。2万4000人の雇用創出
12日夜に日本から帰国したマルコス大統領は、今回の日本公式訪問で持ち帰った日本政府や日本企業からの「経済協力および投資約束の総額が130億ドルに上った」と発表した。帰国後の演説で大統領は、この投資や経済協力が「比国内に2万4000人の雇用を創出する」との推計を提示。「計画に従い行った訪日だったが、予想を超える成果を持ち帰ることが出来た」と喜びを表した。
比政府は総額の内訳を公表していないが、今回の訪問中に正式に比日外務相間で書簡の交換が行われた南北通勤線拡張プロジェクトへの3770億1700万円=約30億ドル=の円借款契約を含む、合計6000億円=約45億ドル=の経済協力が9日の比日共同声明で明記されている。
6000億円の経済協力の対象期間は22~23年度の2カ年であり、1年平均で3000億円。1年平均では、5カ年で1兆円=当時のレートで約90億ドル=の経済協力を提示した2017年の故安倍晋三元首相訪比時の約束額を上回った。
さらに10日の民間企業代表者との会合では、三井物産が比の農業や再生可能エネルギー、デジタル・トランスフォーメーション(DX)事業などに総額6億ドルの投資を約束するなど、製造業、運輸、医療、再生可能エネルギーなど多様な分野で35件の投資意向書が取り交わされている。
▽首相訪比で追加約束か
大統領訪日中に発表された共同声明では、岸田首相が23年中に比を公式訪問することで合意した旨が明記された。
公式訪問時には何らかの経済協力約束が取り交わされるのが通常。5カ年で目標を超える約1兆3800億円の協力を達成した前回にならい、岸田首相の訪比時、現政権に対し大統領任期(2028年)までの中期的な経済協力を約束する可能性もありそうだ。
一方中国は、1月のマルコス大統領訪中時、228億ドルの企業投資を中心に総額253億ドルの経済協力を約束。ODAの実行の遅れが指摘される中、国営企業含む企業投資を大幅に増やすことで2016年にドゥテルテ前政権に約束した経済協力パッケージ=240億ドル=を約13億ドル上回る約束額を提示した。
不安定化する世界情勢の中、地政学的に重要性を高める比を自陣営に引きつけようとする意図も伺える。
昨年9月に大統領がインドネシアを公式訪問した際は84億8000万ドル、同月のシンガポール訪問の際は65億4000万ドルの経済協力が約束されたと比政府は発表している。(竹下友章)