「共同探査は重要」「一側面に過ぎず」 違憲判決で両政府に温度差
05年に合意した比中越南シナ海共同調査への違憲判決への反応で、比中政府に温度差
05年の比・中・ベトナム3カ国の石油公社による南シナ海共同調査合意に対し比最高裁が10日に違憲判断を下したことを受け、比中両政府に波紋が広がっている。推定200億ドルの天然ガスの埋蔵が期待されている南シナ海レクト堆への調査を念頭に、18年に基本合意がなされ、3~5日のマルコス大統領の公式訪中で交渉再開に合意したばかりの比中共同資源探査への影響が確実視される中、南シナ海での比中共同探査に「諦め色」の強い比側と、共同探査実現への強い希望を表明する中国側とではっきりと温度差が表れた。
マナロ外相は11日、米テレビ局CNBCのインタビューで「これは以前からあった問題。マルコス大統領の公式訪中で石油・天然ガスの共同開発への交渉の継続が合意されたが、一般的な内容のみで、詳細が規定されたわけではない」と説明。
「大統領訪中時には再生可能エネルギーや農業分野など、幅広い分野での協力が約束された。石油・天然ガスの共同探査構想は比中関係の一側面に過ぎない」とし、共同探査の可否は比中関係に影響しないと強調した。
05年3カ国共同調査合意時に大統領を務めていたアロヨ元大統領は「最高裁判断を尊重する」とのコメントを発表している。
一方、中国外交部(外務省)の汪文斌(おうぶんひん)報道官は11日の会見で、「3カ国共同調査は05年に同意され、一部実施された。これは南シナ海行動宣言(DOC)実施に向けた重要な一歩となり、地域の安定性、共同、開発を促進する重要な役割を果たした」と意義を強調。中国政府は引き続き「共同海洋探査の道を積極的に模索する」と宣言した。
▽別の海域で共同探査を
上院のズビリ議長は11日、「中国やベトナムのような領土問題で主張が対立している相手とは共同探査ができないということなのか」と問題を提起。「判決を入念に吟味し、中国などとの共同資源探査の協議を慎重に進める必要がある」と述べた。
その上で、「なぜ共同探査の話はいつも西フィリピン海(南シナ海)ばかりになるのか分からない。スルー海にも石油が眠っている可能性があり、(ルソン島東方沖の)ベンハム隆起には領土問題がない」と述べ、別海域での海洋資源の共同探査を提言した。ロティリヤ・エネルギー相は9日に南シナ海以外での共同探査を提案している。
ただ、ベンハム隆起は2012年に国連から比の排他的経済水域(EEZ)内と認定を受けており、基線内部の内水であるスルー海は比の領海だ。いずれの海域での共同探査も、比の全ての天然資源を国有とし、その探査、開発、利用に関する国家の完全な管理・監督化に置くことを義務付け、領海・EEZ内の海洋資源の利用を比国民のみに限定する憲法12条2項に抵触するとみられる。
比政府は05年3カ国共同調査を「予備的調査であり探査には当たらない」と主張していたが、最高裁には認められなかった。(竹下友章)