16年を上回る250億ドル規模 中国の経済協力パッケージ 大統領公式訪中
マルコス大統領訪中で中国から比への新たな経済協力約束総額は、貿易・融資・投資を合わせると16年訪中時を超える253億ドル規模に
マルコス大統領は3~5日の中国への国賓訪問で228億ドルの企業投資約束に加え、21億ドル規模の果物輸入の意思表明を持ち帰った。さらに比政府が7日までに公表したところによると、比中両政府はパシッグ・マリキナ川およびマンガハン放水路における3優先橋梁建設事業に対する4つのドル・人民元混合借款=総額2億180万ドル、経済・技術協力協定=総額15億元(約2億1770ドル)=も新たに取り結んだ。
ドゥテルテ前大統領が16年に訪中した際は、90億ドルの政府開発援助(ODA)と150億ドル企業投資の計240億ドルの経済協力が約束されていた。今回は実施の遅れが指摘されるODAの新規約束が小規模となる一方で、企業投資が大幅に増額、貿易意思表明まで含めると総額としては前回を約13億ドル上回る253億ドルの経済協力パッケージが打ち出された。
比政府は、国有企業含む中国企業からの228億ドルの投資のうち、137億6000万ドルが再生可能エネルギー、17・2億ドルが農業関連産業、73億2000万ドルが電気自動車やニッケル加工など製造業に投下されるとしている。
ハイメ・フロルクルス駐中国比大使は、複数の中国鉄鋼企業を傘下に置く国有持株会社宝鋼集団が比鉄鋼大手スチール・アジア社に初の溶鋼工場建設のため15億~20億ドルの投資を行う見込みだと発表。同大使は「この計画は比鉄鋼業の始まりだ。鉄鋼国産化を進めなければ比製造業は永久に輸入に依存することになる」と意義を強調。また、この投資によって2千~3千人の雇用が生まれるとした。
そのほか、比国際貿易公社=貿易産業省傘下=は中国の肥料製造企業2社と輸入肥料価格引き下げに関するビジネス協定を締結。食品価格値上げ要因の一つである輸入肥料価格の高騰に対し外交交渉で一定の成果を出した。
▽日本と同じ条件で融資を
5日の財務省発表によると、現在進行中のプロジェクトへの中国からの借款総額は、今回新たに締結されたパシッグ・マリキナ川とマンガハン放水路の3橋梁への借款を合わせ、10億6000万ドル。すでに完工した事業や技術協力を除いても、16年に約束した90億ドルのODAの実施からはまだ遠いとみられる。
7日の会見で日本と比べた中国政府の借款条件について質問されたフロルクルス駐中国比大使は「日本政府はよりよい据置期間、償還年数の借款を提示している。中国政府にも日本と同様の条件を提示してほしい」と発言した。
マルコス大統領は2月第2週に日本への国賓訪問を行うとの見通しを発表している。日本は17年に故安倍晋三元首相が比に国賓訪問した際、5年間でODA・民間投資合わせて1兆円=当時のレートで約90億ドル=の経済協力を約束。5年目となる昨年は目標を超える計1・38兆円の経済協力が実行された。
マルコス大統領が日本に公式訪問した際には、日本から現政権へ経済協力が提案されるとみられる。新しい経済協力のパッケージは、比政府や比メディアから中国が今回提示した額や前回の約束額との比較が避けられない見通しだ。(竹下友章)