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11月29日のまにら新聞から

比の格差、アジア最高水準 上位1%が国民所得の17%占める

[ 1051字|2022.11.29|経済 (economy) ]

世銀報告「比では上位1%が国民所得の17%を占めている」。格差はアジア最高水準

 世界銀行はこのほど、報告書「比における貧困と不平等の克服」を公表した。報告書は「比では所得階層別人口の上位1%が国民所得の17%を占める一方、下位50%は国民所得のわずか14%を分け合っている」と指摘。2014~19年のデータ入手可能な東アジア・大洋州63カ国のうち、「比より所得格差が大きいのはタイだけだった」とした。

 同報告は格差の原因を、低所得世帯の高等教育へのアクセスが限られていることや、育児負担を女性に負わせる社会規範にあるとした。

 その一方で、「比は1985年に49・2%に上っていた貧困率を2018年には16・7%まで低減できている」と報告。2018年には「中所得層が1200万人に達し、『経済的に安定した層』が4400万人となった」とした。その要因については「賃金労働への依存度が高く、かつ生産性が高い部門に徐々に労働力がシフトしたため」と説明した。

 ただ、所得の不平等を表すジニ係数=0に近いほど平等、1に近いほど不平等=には地域差が顕著に表れた。都市部では1985~18年まで0・451から0・410まで格差が縮小した一方、地方部では0・377から0・409に増加。地方では、「貧困は減ったが経済格差が拡大した」という状況が生じた。

 比政府は2040年までに「貧困のない中産階級社会」になることを目指す。その目標に対し報告書は「大きな所得格差を抱えながらその目標を達成した国はない」と指摘した。

 ▽コロナの犠牲は貧困層に

 世銀報告書は、コロナ禍の経済被害について「建設業、宿泊業、運輸業で最も雇用が喪失した」と指摘。これらの業種に属する世帯は「2020年上半期の所得減少幅が最も大きかった」とした。

 さらに、「比の経済回復には所得階層別に偏りがあり、コロナ禍で最も損失を被ったのは貧困層。貧困層所得はまだ完全に回復していない」と指摘。「食料価格が上昇する中、貧困層は食料消費量を減らすことで対処している。こうした状況は将来的に貧困層の子どもたちの健康や成長に深刻な影響を与える可能性がある」とした。

 経済学者のトマ・ピケティ氏は、資本収益率が経済成長率より大きいことを歴史的統計から明らかにし、資本主義経済下では必然的に経済格差が拡大することを指摘。格差解消策として資産課税を推奨している。

 また、アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁は、コロナ禍後の経済格差拡大に対処するため累進的な所得税や固定資産税の導入を提案している。(竹下友章)

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