軍需産業で経済発展を 与党有力議員が提言
経済政策通の有力議員であるサルセダ氏が「防衛産業育成を検討する時が来た」と提唱
経済政策通の有力議員として知られるジョーイ・サルセダ下院財源委員長=与党・ラカスCMD=は「歴史的にイノベーションは軍需産業から発生した」とし、現政権に戦略的な防衛産業の育成を提唱している。26日の英字紙ビジネスミラー電子版が独自取材記事として報じた。
上位中所得国入りを目前にする比経済にとって、農村人口の都市流入による「ルイス型の経済成長パターン」から転換できずに成長が停滞する「中所得国のわな」への対処は重要課題。同議員の提言はイノベーションと生産性向上による成長戦略の一つであると同時に、「戦争産業」と批判される軍産複合体形成の懸念もあることから議論を呼びそうだ。
サルセダ議員は「防衛産業を大げさに考える必要はない。わが国に成長をもたらす産業の一つとして、本格的に検討する時期が来た」と主張。「世界史を振り返れば、経済大国は経済的、政治的、軍事的利益の完全な一致によって誕生している」とし「近代資本主義は世界初の株式会社であるオランダ東インド会社から、20世紀以降の資本主義は米国の軍産複合体から生まれた」と述べた。
同議員はまた「軍需産業はイノベーションをもたらす」と指摘。冷戦下の軍事競争で発明された技術の民生転用例として、インシュリンポンプ、消防設備、レーシック手術、水濾過(ろか)技術、ワイヤレス・ヘッドセット、冷凍食品などを挙げた。インターネットも冷戦下の核戦争への備えとして米国で発明されている。
キャッチアップ型産業発展モデルの一つである日本では、明治期に軍艦国産化を目的とした製鉄業・造船業育成政策により工業化に成功している。
比政府は6月、武器製造、修理、貯蔵業への外国投資をネガティブリストから除外。外資を活用した防衛産業育成のとびらは開かれている。(竹下友章)